6月15日の会見で連合の芳野友子会長は、年金の第3号被保険者制度について「不公平な制度ではないか」と言及した。ジャーナリストの溝上憲文さんは「この制度の廃止はこれまでさまざまな観点から議論され、政府も“第3号被保険者包囲網”というべき被用者保険の適用拡大を進めている。会社員を多く組織する連合が動き出したことで、今度こそ廃止になるのか、その行方を注目したい」という――。

連合が第3号被保険者制度の廃止に言及

労働組合の中央組織の「連合」が、国民年金保険料の納付義務のない専業主婦(夫)の第3号被保険者制度の廃止を含む検討をしていることが大きな話題となっている。

貯金箱とコインと老人のオブジェ
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第3号被保険者制度の廃止はこれまでさまざまな観点から議論されてきた。1つは「働き方に中立ではない不公平な制度」という問題だ。

もともと第3号被保険者制度は1985年の年金制度改正で導入された。それ以前は会社員の夫がいる妻も任意で年金保険料を払って国民年金に加入していた。当時は約7割の主婦が国民年金に加入していたが、残りの3割は加入しておらず、将来、無年金状態になることが危惧された。本来なら今でもそうであるように強制加入させるべきだが、当時の政府は約7割の国民年金加入者も含めて全員の保険料負担を免除する第3号被保険者制度を導入したのである。当時は今と違って年金財政にもゆとりがあった。政府としては、外で働く夫を支える妻の“内助の功”に報いたいという思いもあった。

しかし、今では専業主婦世帯と共働き世帯は逆転している。1980年代は専業主婦世帯が約1000万世帯だったが、1992年に共働き世帯が914万世帯、専業主婦世帯が903万世帯と逆転し、以降、専業主婦世帯が減少の一途をたどり、2019年は582万世帯(共働き世帯1245万世帯)にまで減少している(総務省統計局「労働力調査」)。共働き世帯の増加だけではなく、未婚の現役会社員も増加している。

単身、共働きが増加し、40年前の標準モデルと齟齬

連合の廃止案のたたき台となる「働き方に中立的な社会保険制度等のあり方に関する連合としての検討の方向性(素案)について」に関し、連合の清水秀行事務局長は記者会見で以下のように述べ、廃止の方向性を打ち出した(5月18日)。

「1985年に法改正で導入された時から当時の標準モデルに基づいていわゆる男性雇用者と無業の妻からなる世帯と、そこを基本に考えられたことで、女性の年金保険を確立させて社会的なセーフティネットとしての役割を果たしてきたという指摘がある一方で、当時の一般的な世帯を標準モデルとして導入された制度であるにもかかわらず、やっぱり単身・共働き世帯の増加など情勢の変化、ライフスタイルが変わってきたということで言えば、当時のその形で作ったものについてはもうかなりの齟齬そごが出ているだろう」