デフレを脱却し経済が拡大軌道に乗り始めた

上記3つの理由というのはいずれもここしばらくの現象でしかありません。本当に大事なのはこれから日本経済が持続的に成長し、それによって株価が好調を続けるか、ということです。これについてはさまざまな見方がありますが、私は日本の株価はまだそれほど割高にはなっていないと考えています。

6月8日に発表になった今年1~3月のわが国の名目GDP(国内総生産)は前期比で年率8.2%のプラス。年換算で572兆円と過去最高になりました。私はこれに注目すべきではないかと思っています。すなわちこの事実が示すことは日本の経済がデフレから脱却し、名目経済が拡大軌道に乗り始めたということだからです。これはとても重要な示唆です。

見出しに踊る「GDP」の文字
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いわゆる「失われた30年」というのは正確に言えば「失われた20年+体質が改善していった10年」と言えるでしょう。80年代後半のバブル経済によって過剰になった設備、債務、そして雇用が20年かけてようやく解消され、過去10年間で利益の出る体質になった企業が増えてきたということです。この流れは急に変わることはないと思います。

「乗り遅れた!」と焦る必要はない

ただ、経済にしても株価にしても短期的にはさまざまな要因でブレることがありますから、これからまったく下落することなく株価が上がり続けるということはまずあり得ません。もしあなたが「乗り遅れてしまった!」と思っても、焦って株を買わなければならないということはありません。あくまでも「長期的には企業の成長と株価上昇が期待できる」ということですから、次の短期的な下落局面を待って買っても決して遅くはないのです。

逆に、「下がったら怖いから」ということで慌てて売らなくても良いのではないでしょうか。もちろん株式への投資はあくまでも自身で判断するものですから、私は買いも売りも推奨するものではありません。ただ、経済全体の流れがようやく変わりつつあるところなので、この動きを見て少しじっくりと考えるべきではないかと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。