何はともあれ「歩く」

鞄を抱え、同居している次女が作ってくれるお弁当を持って、ひとりで家を出て、最寄りのバス停までの300メートル弱の道のりを歩いてバスに乗り、クリニックの近くのバス停で降ります。そして、またクリニックのあるビルまで歩きます。

タクシーを使ったり、迎えにきてもらったりはしません。ラクをしたぶん、自分の体力が落ちるのですから、あたりまえのこととして毎日歩くのです。

91歳の現役医師、藤井英子さん。健康の秘訣は「とっておきの靴で歩くこと」。
撮影=秋月 雅
91歳の現役医師、藤井英子さん。健康の秘訣は「とっておきの靴で歩くこと」。

年齢を重ねるごとに「体力が落ちた」と感じる人は多いと思いますが、実際に、人の筋肉というのは、20代が最大で、30歳を過ぎると徐々に減少していき、10歳年をとるごとに5〜10%筋力が低下すると言われています。

普通の生活を送っていても、筋肉が減りやすくなりますから、注意が必要です。もしも、つまずきやすいとか、立っているのがつらい、疲れやすい、猫背のほうがラクというような状態であるなら、1日のうち少しでも歩くようにしてみてください。

若返る歩き方というのがあります。早歩きを3分、ゆっくり歩きを3分、それを毎日30分程度続けること。自分にできる範囲で続けてみてください。歩くことがあたりまえになるように生活のリズムを整えることも大切です。

とっておきの「靴」を選ぶ

普段履く靴を、すぐに思い出せますか? 自分に合うよい靴は、人を活動的にします。

よい靴は、履いている人を快活にし、行動的にしてくれる魔法のようなものです。

ビジネスをしている人の間では、靴がその人を語ると言われることもあるようですが、年齢を重ねてからの靴選びこそ、大切にしたいものです。履きやすい、歩きやすい靴を履くということは、転倒しないお守りを持っているようなものですね。

私は普段履いている靴はBÄR(べアー)のものです。ドイツのメーカーだそうですが、同じものを何度も買い換えて、ずっとこの靴を履いています。

外に出れば必ずお世話になる靴ですから、自分の足に合った靴を選ぶことはとても大切です。とくに高齢になると、長年の歩き方や使っていた靴によって、扁平足へんぺいそく外反母趾がいはんぼしなどの変形があることが少なくありません。

また、糖尿病の人は靴ずれでの小さな傷でも治癒しづらかったり、人工透析の人はむくみやすかったり、病気によっても、足のトラブルが多くなります。

これまで靴に関心を持ってこなかった人も、健康寿命を延ばしたいという人も、靴の選び方に真剣になりましょう。履きやすいからといって大きめのサイズを選んだり、かかと部分がやわらかいものを選ぶと歩行にとっては悪影響です。

人生を通じて健康に歩くための靴は、命綱のような大切な存在です。かかとが安定していて、靴底はある程度の硬さがあるもの。つまずきを防ぐために、少し爪先が上がっているもの。滑りにくい素材のものを選ぶようにしましょう。