紫綬褒章の先に目指す次の舞台

今回は個人で紫綬褒章を受章しましたが、顔認証に関わるみんなが受章したのだと受け止めています。

朝のニュースで受章が報じられてすぐ、遠藤さんからお祝いのメールが届きました。一介の社員に過ぎない私に、しかも友人よりも先にメッセージが届いたことに驚くとともに、そんな元トップがいるなんて、NECはすごくいい会社だなと改めて思いました。

受章は今後の活動の励みでもあります。顔認証で少しは世の中を変えてきた自負がありますし、どのようにすれば変えられるかもわかりましたので、日本人でもAIで世界の舞台に立って勝てること、そしてその方法を伝えたいと思っています。また、ヘルスケア領域など社会を変えるための新たな基礎技術開発も進めていきたい。

スイスの国際経営開発研究所が発表するデジタル競争力ランキングで、日本は低位に沈んでいますが、私はこれを「伸びる余地が大きい」のだと捉えています。特にビッグデータの活用が進んでいないと指摘されていますが、苦手科目がわかれば対策も取りやすいものです。AIを味方につけるスキルを養っていけば、一気に逆転できるタイミングがくると確信しています。

構成=加藤学宏

今岡 仁(いまおか・ひとし)
NECフェロー

1997年NEC入社。脳視覚情報処理の研究開発に従事したのち、2002年に顔認証技術の研究開発を開始。世界70カ国以上での生体認証製品の事業化に貢献するとともに、NIST(米国国立標準技術研究所)の顔認証ベンチマークテストで世界No.1評価を6回獲得。著書に『顔認証の教科書 明日のビジネスを創る最先端AIの世界』(プレジデント社)がある。