ChatGPT利用の注意点1 間違いもそれらしく返してくる

一方で、現時点ではChatGPTの弱点を指摘する声もよく耳にしますが、ここでは2つだけ取り上げることにします。

その1つが、間違った内容も「それらしく」返すというもので、文章がつながっているので一見すると正しそうでも、よく読めばロジックが破綻しているケースがあります。

例えば、「湖にスイレンの花が落ちた。スイレンは1分たつと2倍に増える。湖がスイレンでいっぱいになるのに48分かかる。では、スイレンが湖のちょうど半分になるのに何分かかるだろうか?」と聞いたところ、考え方や計算の過程が示され、前半はおおむね正しい内容でした。ところが後半は突然ロジックが飛んでしまって、「この結果からスイレンが湖のちょうど半分になる時間は、48分÷2=24分であることがわかります」となるのですが、文章としての流れは正しいので思わず信じてしまいそうになります。なお、正解は池が満杯の状態から逆算すれば簡単に導き出せて、47分です。

【図表3】論理クイズへの回答

ここでは数式の例を挙げましたが、数式に限らずありとあらゆるケースにおいて、ロジックに基づいて回答しているわけではないことに注意すべきでしょう。ChatGPTのアウトプットを鵜呑みにして、そのまま人間のアウトプットとして使用するのは危険です。

とはいえ、もちろん人間のインプット支援では十分に役立ちます。裏付けが必要なのは普段のインターネット利用時と同じで、例えばウィキペディアの情報がすべて正しいわけではありません。この状態をことさら問題視して「ChatGPTは使うべきでない」と結論づけるのは早計ではないでしょうか。

ChatGPT利用の注意点2 著作権を侵害する恐れがある

ChatGPTのもう一つの大きな弱点は、著作権の問題がクリアになっていないことです。みだりに引用して出典の著作権を侵害してしまうケースだけでなく、さまざまなデータを学習して導き出した文章であっても、既存の文章とたまたま完全に一致してしまう可能性も考えられます。思考の助けにするだけなら問題ないとしても、それをアウトプットとして転載する場合には気をつけなければなりません。

ただ、これも今までのネットリテラシーと変わらない話であり、著作権を侵害している可能性を視野に入れて有効活用すればいいのです。

ChatGPTの活用方針は企業や自治体によって異なるようですが、それぞれが実態に沿って判断を下すのは正しい姿勢だと思います。個人情報を入力するのは情報流出につながるためNGですが、倫理感やリテラシーが備わっているのなら有効活用できるでしょう。100%使えないものでもなければ、100%自由に使っていいものでもない。それはインターネットの利用における一般的な注意点と変わりありません。

構成=加藤学宏

今岡 仁(いまおか・ひとし)
NECフェロー

1997年NEC入社。脳視覚情報処理の研究開発に従事したのち、2002年に顔認証技術の研究開発を開始。世界70カ国以上での生体認証製品の事業化に貢献するとともに、NIST(米国国立標準技術研究所)の顔認証ベンチマークテストで世界No.1評価を6回獲得。著書に『顔認証の教科書 明日のビジネスを創る最先端AIの世界』(プレジデント社)がある。