ChatGPTは何が画期的なのか

図表2にAIの3段階の革命とその中における生成系AIによる革命の位置づけについて示しました。

【図表2】生成系AI(ChatGPT)による革命の位置づけ

2013年ごろには、主に画像を認識する「学習系AIの革命」が起きました。言い換えると、インプットのAI革命です。

それに続いて、今まさに訪れているのが「生成系AIの革命」です。これはアウトプットのAI革命であり、具現化した代表的な存在がChatGPTなのです。

学習系AIが台頭した当時、職業が大きく変わると騒がれましたが、現実にはそれほど変わっていません。なぜなら、アウトプットまでは実現できなかったからです。今回の革命はアウトプットまでつながったからこそ、画期的なのです。そのため「生成系AIの台頭で消える職業は何か」といったことが注目されがちですが、それはつまらない論点だと思います。長い歴史の中で、例えば「飛脚」という仕事がなくなりましたが、それによって悲しむ人がいたでしょうか。それよりも、この画期的な技術をどう生かせるかをそれぞれの立ち位置で考えていくことが大切なのです。

ChatGPTが現在注目されている使い方は、言語をインプットし言語をアウトプットするLanguage to Languageの使い方です。ChatGPTは言語がベースだからこそ、カバーする産業や業務も広く、利用が進めば幅広い産業の知見(インダストリーナレッジ)がChatGPTによって集約されることになります。もちろん機密情報を漏らさない仕組みの構築が前提となりますが、高度な知識生成によってビジネスの競争力を獲得できる可能性を秘めているのです。

第3段階のAI革命で起きること

生成系AIの革命も、AIが進化する過程の一部に過ぎません。インプットとアウトプットができる脳はあっても、その司令を受けて動く手足=ロボットや機械と明確にはつながっていないのが現状です。

今後、手足までつながるようになれば、製造、ロジスティクス、農業、介護など、あらゆる産業に与える影響は計り知れません。このときインダストリー・ナレッジの重要性が増すため、ChatGPTのようなAIもまた大きな役割を担うことになるでしょう。

そうなれば、もちろん私たちのライフスタイルや仕事は変化します。その時期を正確に予想することはできませんが、変化についてはある程度見通せます。いずれ変化が訪れるのは間違いないのだから、時期ではなく中身に注目することのほうが重要だと、私は考えています。