日本の得意分野を発揮できるチャンス

次の革命に不可欠な手足の部分は、これまで日本が得意としてきた産業です。日本の国力低下を心配する声が高まっていますが、AI技術の進展が潮目を変えることになるのではないかと期待しています。

また、日本は少子高齢化、人口減少の局面がしばらく続きます。働き手が少ない中で社会を維持していくためにも、AIによって制御されるロボットや機械は欠かせない存在であり、窮地の日本を救う切り札となるでしょう。

ChatGPT活用の広がり

図表3はChatGPTの用途についてまとめたものです。

【図表3】ChatGPT活用の広がり

ChatGPTの現在注目されている用途について、先ほどLanguage to Languageと表現しましたが、インプットは言語だけである必要はありません。例えば、データを与えて「どういう関数で近似できる?」と聞けば、「線形」と答えてくれます。データサイエンスのための統計リテラシーがビジネスパーソンに求められつつありますが、統計が苦手な人も少なくないでしょう。ビジネスでデータを味方にするのにも、ChatGPTは有効なツールになり得ると考えています。

さらに今後は、画像をインプットするImage to Languageや、センサーをインプットするSensor to Languageにも拡張していくでしょう。

例えば、機械に取り付けたセンサーから集めた数値データを基に、ChatGPTで異常点を探し出し、機械のトラブルを未然に防ぐような用途が考えられます。生産性が向上するだけでなく、現場の人手不足解消や働き方改革も期待されます。

ChatGPTはあらゆる用途で利用できるとはいっても、特にまだ浸透していない段階では戸惑ってしまうでしょう。利用を促進するためには、社内での成功事例を共有したり、利用者の不安を払拭したりする体制の構築が不可欠です。

当社では、社内のデスクワーク等の一般的な業務のほか、研究、システム開発や管理において安心して利用できるように、NECグループ専用のChatGPT環境を構築し事前申請に基づき公開しています。そして、問い合わせ内容や、問い合わせの過程で生まれたナレッジをシステムで管理しており、専門チームのサポートによりChatGPTをより良く活用できるように支援しています。

各社においてもChatGPTの可能性を引き出すための体制づくりが求められるでしょう。

構成=加藤学宏

今岡 仁(いまおか・ひとし)
NECフェロー

1997年NEC入社。脳視覚情報処理の研究開発に従事したのち、2002年に顔認証技術の研究開発を開始。世界70カ国以上での生体認証製品の事業化に貢献するとともに、NIST(米国国立標準技術研究所)の顔認証ベンチマークテストで世界No.1評価を6回獲得。著書に『顔認証の教科書 明日のビジネスを創る最先端AIの世界』(プレジデント社)がある。