名目GDPが低いのも給料が上がらないのも日銀のせい

つまり、世の中に出回るお金の量が増えるほど、名目GDPの数値も伸びることが分かったのだ。世界196カ国すべての30年分のデータを調べたところ、この2つの関係性は明白であった。

名目GDPの伸び率は、お金の伸び率で決まる。

では、お金の伸び率を左右しているのは誰なのか?

日銀である。

つまり、日本の名目GDPが低いのも、給料が上がらないのも、ぜんぶ日銀が原因なのだ。

ちなみに、お金の伸び率についても各国がデータを出しているが、これらを比較して順番を並べると、日本は世界でほぼビリだ。

お金の伸び率でビリ。

だから、名目GDPの伸び率でビリ。

その結果、賃金の伸び率もビリ。

これが日本という国なのである。

そして、お金をどれだけ刷るか刷らないかは日銀の管轄なのだから、全部、日銀に原因があるのだ。

日本銀行
写真=iStock.com/Manakin
※写真はイメージです

「ハイパーインフレになる!」と騒ぎ立てたマスコミの罪

原因が分かったのだから、解決策は単純明快である。

給料を上げるためには、日銀にたくさんお金を刷ってもらえばいい。

実際、日銀総裁の黒田東彦氏も最初は頑張っていた。強力な金融緩和策を何度も打ち出し、「黒田バズーカ」なる言葉まで生み出したほどだ。

だが、それでも足りなかった。

そもそも20年以上、日本のお金の伸び率は悲惨な状況だったのだ。

20年サボり続けたものが、数年で挽回できるはずがない。もっともっとやれば良かったのだが、黒田総裁の勢いも尻すぼみになってしまった。

さらに邪魔をしたのがマスコミである。

日銀が金融緩和策としてお金を刷るたびに、「このままではハイパーインフレになる!」と、散々に騒ぎ立てた。

髙橋洋一『増税とインフレの真実』(秀和システム)
髙橋洋一『増税とインフレの真実』(秀和システム)

結果を見てみればいい。この30年、日本がハイパーインフレになったことなど一度もない。お金を刷れば条件反射のように「ハイパーインフレ」を連呼し始める「ハイパー野郎」たちは、全員間違え続けているのだ。

そもそも日本は、長年デフレ下にあったのである。デフレを脱却しようとしている最中に、ハイパーインフレの心配をすることのちぐはぐさが分からない人間が多すぎる。

しかも、論理的に破綻していることを著名ジャーナリストが、さも正しそうに知識人ぶってテレビで言うから困ったものだ。

結果的に、日本の賃金は長い間上がらず、日本は貧しくなっていった。

ウソをばらまいたマスコミ、そして間違った見解を垂れ流した「ハイパー野郎たち」の罪は重い。

髙橋 洋一(たかはし・よういち)
数量政策学者・元内閣官房参与

1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。数量政策学者。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究学科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。1980年、大蔵省(現財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員を経て、内閣府参事官、内閣参事官等などを歴任。小泉内閣・安倍内閣で経済政策の中心を担い、2008年に退官。主な著書に、第17回山本七平賞を受賞した『さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白』(講談社)などがある。