社内の同質性が高いと優秀な人材ほど辞めてしまう

【D】うちも日本企業にありがちな例に漏れず、社員の同質性の高さが課題なのですが、その原因は“ホワイト”すぎるからなんですよね。もともと残業は週平均10時間で、テレワークも推進しており服装も自由。育休の取得比率も男女変わりません。だから働きやすくて離職率も低い。

それ自体は良いのですが、その同質性の高さゆえに変化が起こらず昇進制度も昭和感満載で、いまだに基本、年功序列です。上が辞めないとポストが空かないから優秀な人ほど外部に流出してしまい、言い方は悪いですが“緩い”社員ばかりが残ってしまっています。D&Iという観点では、女性活躍よりも同質性の高い“緩い”社員たちの処遇のほうが大きな課題ですね。

【C】最近「将来有望だな」と思っていた30代の社員が次々と辞めていくんですよね。先日も、在宅勤務がしづらい雰囲気に失望したと言って管理職候補だった男性が退職してしまいました。また、女性は面談すると自己評価が非常に低い傾向があって、上司からの高い評価も信じられない。「自分はこの仕事に向いていないのではないか」と言うんです。

採用を絞っていた影響で30、40代の女性が少なく自分の将来像が描けないうえ、男性がいまだに接待、ゴルフ、夜遅くまで飲み会をして営業しているのを見ると「ああはなれない」と思ってしまうんでしょうね。

【D】柔軟な働き方はD&Iには不可欠なんでしょうけど、工場勤務の社員は3交代制など時間に縛られる働き方をせざるをえないですよね。

【B】工場は内勤より多く休暇を付与するなどのインセンティブを設ける方向で検討しています。人事の立場としては一律のルールを設けるほうが圧倒的に楽なんですが、これからは社員ごとにある程度個別対応をしていかないと、優秀な人材には選ばれなくなってしまうのは間違いなさそうです。

イラスト=浜畠かのう

野村 聖子