悩み相談は悲しみの追体験
打ち明け話とは、そもそもどういうものかを考えてみましょう。
他人に悩みを相談するということは、その悲しみや苦しみを、もう一度、自分で追体験することに他なりません。
ようするに、同じ苦しみを味わわなければならないのです。
自信のある人には耐えられても、自信のない人には、ただ苦しさが長引くだけ。ですから、自信のない人は、悲しいことがあっても、そのまま放っておくのが正解になるのです。
キャメロンの研究では、自信のある人にとってはお悩み相談は効果的だったわけですが、自信の高低にかかわらず、相談などはしないほうがいいのかもしれない、ということを示す研究もあります。
ニューヨーク州立大学のマーク・シーリーは、2001年9月11日にアメリカで起きた大規模テロ事件の直後から、2138名の人を対象に2年間の追跡調査をしてみました。何を調べたのかというと、「テロによって引き起こされた心の傷を他人に語るかどうか」です。
その結果、大方の予想に反して、自分の抱えているトラウマなどを他人に語ったりしない人のほうが、2年間の時間経過の中で、トラウマの影響を受けなくなっていたのです。
中途半端に、他の人に相談などをしようとすると、かえって苦しみが尾を引く、ということを覚えておかなければなりません。
では、どうすればいいのかというと、簡単な話で、人に話すのをやめて、思い出さないようにすればいいのですよ。放ったらかしにしておけば、そのうち自然に忘れ去ることができますから、それを待つのです。
他の人に悩みを打ち明けようとすると、そのたびに記憶が更新され、なかなか忘却できなくなります。ですから、何も考えずに放っておくのがいいというわけです。
苦しいからといって、安易に他人に頼ろうとすると、よけいに苦しさが増してしまうのですから、要注意ですね。
言霊が私たちの心理状態に影響を与える
日本には、言霊思想というものがあります。
受験生は「落ちる」とか「滑る」という言葉をなるべく使わないように注意します。そういう言葉を使っていると、本当に受験に落ちてしまうと思うからでしょう。こういうのを忌み言葉とも呼びます。
船乗りは、「帰る」という言葉を使わないという話を聞いたことがあります。「帰る」が「船が転覆する」を意味することになるので、縁起が悪いからでしょうね。
じつは、こういう心がけ自体は、間違っていません。
ふだん、どんな言葉を使うかによって、私たちの心理状態も大きな影響を受けてしまうからです。