※本稿は、内藤誼人『自信をつける習慣 よけいな迷いが消えていく58のヒント』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
自分の顔はじっくり見ないほうがいい
トイレを出て手洗いをするとき、みなさんは自分の顔を見ていますか?
多くの洗面台には、普通は正面に大きな鏡があるので、どうしても自分の顔を見てしまうものです。でも、なるべく自分の顔は、じっくりと見ないほうがいいでしょう。
じっと見つめていると、毛穴が気になったり、うぶ毛が気になったり、シミやそばかすが気になったりして、知らず知らずのうちに「自分は、魅力的ではないのかも?」という不安を感じるようになるからです。
鏡は、身づくろいをするときにはとても便利な道具ですが、「自信を失わせることもある」という点では、危険な道具でもあるのです。
鏡を見ないと自信が高まる
実際、「鏡を見る頻度を減らす」ことが、自信を高めることを示した研究もあります。ウソのように思われるかもしれませんが、本当にそういう研究があるのですよ。
フロリダ州立大学のナタリー・ウィルバーは、84名の女子大学生に実験に参加してもらい、約半分の41名の女性には、2週間、「なるべく鏡を見ないこと」という指示を出しました。
鏡を見て身づくろいをする頻度を減らしてもらい、街中を歩いているときも、ウィンドウに映る自分の姿を見ないように気をつけさせたのです。ウィルバーは、念を入れて、実験期間中の夜には、「できるだけ鏡を見ることを減らして」というリマインドのメールも送りました。
残りの43名の女性はコントロール条件(比較のための条件)だったので、そういう面倒なことは一切指示されず、今まで通りに2週間生活してもらいました。
では、2週間後、どのような変化が起きたでしょうか。
なんと、鏡を見ることを減らした条件では、コントロール条件に比べて、外見を気にしすぎなくなり、人間関係における不安感が減り、自分の身体に関する不満も減ることがわかりました。
しょっちゅう鏡を見ているから、私たちは外見が気になってきて、それが自信を喪失させるのです。そのため、鏡を見る頻度を減らすようにすれば、外見も気にならなくなり、自信も失われずにすむのです。
とりわけ女性は、他の化粧品と一緒にコンパクト手鏡をバッグに入れて持ち歩いていて、ひんぱんに自分の顔のチェックをするものですが、あまり気にしすぎるのは考えものです。ちょっとだけ控えることをおすすめします。
手洗い場には大きな鏡が置かれていることが多いので、なかなか鏡を見ないというわけにはいきませんが、それでも自分の顔をサッと一瞬だけ確認するくらいにしておきましょう。
そうそう、お風呂に入るとき、お風呂で、あるいは脱衣所の鏡で、自分の裸の姿を映して見るのもやめたほうがいいですよ。たいていの人は、お腹がでっぷりと出ている醜い自分の姿にガッカリするだけですから。そういう私も、なるべく鏡は見ないようにしています。本当に落ち込みますからね。
悩みは打ち明けないほうがいい
悲しい出来事があったとき、仕事に悩みを抱えているときには、無性にだれかに話を聞いてもらいたくなるものです。悩みを打ち明けさえすれば、心の中のわだかまりが少しでも軽くなると思うからでしょう。
しかし残念ながら、それは錯覚です。
自信のない人は、むしろ悩みなど打ち明けないほうがいいかもしれません。
カナダにあるマニトバ大学のジェシカ・キャメロンは、試験に失敗したことを自分の恋人に語ると、自信のある人は、打ち明け話によってスッキリするものの、自信のない人はかえってネガティブな感情が高まってしまった、という報告をしています。
悩み相談は悲しみの追体験
打ち明け話とは、そもそもどういうものかを考えてみましょう。
他人に悩みを相談するということは、その悲しみや苦しみを、もう一度、自分で追体験することに他なりません。
ようするに、同じ苦しみを味わわなければならないのです。
自信のある人には耐えられても、自信のない人には、ただ苦しさが長引くだけ。ですから、自信のない人は、悲しいことがあっても、そのまま放っておくのが正解になるのです。
キャメロンの研究では、自信のある人にとってはお悩み相談は効果的だったわけですが、自信の高低にかかわらず、相談などはしないほうがいいのかもしれない、ということを示す研究もあります。
ニューヨーク州立大学のマーク・シーリーは、2001年9月11日にアメリカで起きた大規模テロ事件の直後から、2138名の人を対象に2年間の追跡調査をしてみました。何を調べたのかというと、「テロによって引き起こされた心の傷を他人に語るかどうか」です。
その結果、大方の予想に反して、自分の抱えているトラウマなどを他人に語ったりしない人のほうが、2年間の時間経過の中で、トラウマの影響を受けなくなっていたのです。
中途半端に、他の人に相談などをしようとすると、かえって苦しみが尾を引く、ということを覚えておかなければなりません。
では、どうすればいいのかというと、簡単な話で、人に話すのをやめて、思い出さないようにすればいいのですよ。放ったらかしにしておけば、そのうち自然に忘れ去ることができますから、それを待つのです。
他の人に悩みを打ち明けようとすると、そのたびに記憶が更新され、なかなか忘却できなくなります。ですから、何も考えずに放っておくのがいいというわけです。
苦しいからといって、安易に他人に頼ろうとすると、よけいに苦しさが増してしまうのですから、要注意ですね。
言霊が私たちの心理状態に影響を与える
日本には、言霊思想というものがあります。
受験生は「落ちる」とか「滑る」という言葉をなるべく使わないように注意します。そういう言葉を使っていると、本当に受験に落ちてしまうと思うからでしょう。こういうのを忌み言葉とも呼びます。
船乗りは、「帰る」という言葉を使わないという話を聞いたことがあります。「帰る」が「船が転覆する」を意味することになるので、縁起が悪いからでしょうね。
じつは、こういう心がけ自体は、間違っていません。
ふだん、どんな言葉を使うかによって、私たちの心理状態も大きな影響を受けてしまうからです。
うつ病の人の使う言葉はネガティブなものが多い
テキサス大学のステファニー・ルードは、現在うつ病の31名、かつてうつ病だった26名、人生で一度もうつ病になったことのない67名に、20分間、簡単なエッセイを書いてもらい、各自のエッセイで使っている単語を分析してみました。その結果は図表1の通りになりました。
現在うつ病の人は、ひんぱんにネガティブな単語を使っていることがわかりますね。
「疲れた」「死にたい」「将来が不安」「うんざり」「陰気」「どんより」といったネガティブな単語をしょっちゅう使っていると、本当に気分もそんなふうになってしまいますので気をつけなければなりません。
ではどうしたらいいのでしょうか。
明るい言葉が自信に繋がる
自信をつけたいのなら、もっと明るい言葉を使いましょう。
「キラキラ」「夢いっぱい」「希望」「明るい」「晴れやか」「ウキウキ」……。ふだんからこういう言葉を使って会話をするようにするといいですよ。
SNSでつぶやくときにも、できるだけ明るい単語を使うといいですね。そうすると、私たちの心も、ポジティブな方向に変わってくれますから。
かりに仕事で疲れたとしても、「この疲れが心地よい」というように、必ずポジティブな単語で締めくくることが大切です。仕事がうまくいかなくとも、「いやあ、いい勉強をさせてもらった!」と、ウソでもいいので明るく公言するようにしたほうが、自信もついてくるはずです。