パートナーの男性と「見えている世界が違う」と意識のずれを感じるときにはどうしたらいいのか。作家のアルテイシアさんとフェミニストの田嶋陽子さんが、本気でぶつかることの大切さや難しさについて語り合った――。(第3回/全3回)

※本稿は、アルテイシア・田嶋陽子『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか⁉』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

背中を向ける二人
写真=iStock.com/kemalbas
※写真はイメージです

夫と「見えている世界が違う」

【アルテイシア(以下、アル)】うちの夫は私に女らしさや妻の役割を求めないけど、それでも見えてる世界が違うなと感じることは多いです。

【田嶋】どんなときにそう思うの?

【アル】たとえばタクシーに乗ったとき、運転手に失礼な対応やセクハラ発言をされるって、女性にはあるあるじゃないですか。それを夫に話すと「言い返したらいいやん」と言われたので、「きみみたいなゴリマッチョな男はそんな対応されないよね」と返しました。

【田嶋】そりゃあされないよね。絶対に下に見られないから。

【アル】密室で何かされたら怖いから笑顔でやり過ごすしかない、そんな経験を何度もしている人間と、そもそも舐めた態度をとられたことのない人間では、見えてる世界が違うんですよね。

【田嶋】それで、夫とはちゃんと話し合うの?

【アル】「まあそこに座りなさい」と言って、こつこつと説明します。自分の書いたコラムを「まあこれを読みなさい」とLINEでシェアすることもあります。

【田嶋】あなたはそれができるからいいよね。

【アル】「アルさんのコラムを読むうちに夫のジェンダー意識がアップしました」みたいな報告もよくいただくので、どんどん使ってほしいなと思います。それでちゃんと読むパートナーだったらまあ聞く耳を持つ人だろうし、歩み寄れる可能性はあるかなと。

彼女は彼に説明をしなかった

【田嶋】小説『僕の狂ったフェミ彼女』はおもしろかったんだけど、私が物足りなく感じたのはそこなんだよね。彼女は全然彼に説明をしなかった。

【アル】彼女は諦めちゃいますよね。そこがめっちゃリアルだなと思いました。いちいち説明するのってすごくしんどいんですよ。「いやでもさ」と遮られてクソリプされると、こっちも頭にきてケンカになるし。

妻から責められてるように勝手に感じて、不機嫌になる男性も多いです。「主人公のスンジュンが夫や元彼みたいでイライラした」って感想もよく聞きます。

【田嶋】彼女はスンジュンとセックスはするけど、フェミニズムのことを全然教えてあげないから不親切だと思う。