傷つけられて、男性を信用できなくなるのは当たり前
【田嶋】差別は構造だし、「文化」だから、社会に浸透してしまっている。だから「他の男性も同じことをしてくるかも」って警戒しちゃうのはわかる。
【アル】ノットオールメン(全ての男が悪いわけじゃない)なんてことは百も承知だけど、こっちは傷が癒えてないので。しかも女が性暴力や性差別にこれだけ苦しんでるのに、無関心で無理解な男性が多いじゃないですか。こちらの苦しみを知ろうともせず、「痴漢は冤罪もあるよね」とか言われたら殺意を覚えますよ。
【田嶋】女性がさんざん傷つけられてきて、男性を信用できなくなるのは当たり前で、それでも男性についていかざるをえないのは、女性が自分のパンを稼ぐのは当たり前じゃなかったからだよね。
【アル】ミサンドリー(男性嫌悪)がまったくない女性はいないと思います。ただ私の場合、フェミニストとして活動するうちにミサンドリーが減ったんですよ。一つは中高生の男の子たちに授業をする中で「尊いなあ、守りたいなあ」と思ったから。
【田嶋】親目線というか、教育者目線で「男性」を見るようになったのかもね。
【アル】そうなんです。もう一つは仕事を通してジェンダー意識の高い男性たちに会うようになって、希望を感じているから。
男と女だって最後は親友
【田嶋】私はそういうのに騙されないよ(笑)。
【アル】私、騙されてるんですか?(笑)
【田嶋】だってあなたみたいな知名度のあるフェミニストに会ったら、マッチョを前面に出すなんてできないじゃない。あなたに合わせて良い顔もするだろうし、そんなのに騙されちゃダメ。
【アル】先生もわりと男性を信用してなくないですか?(笑)
【田嶋】そういう仕事の付き合いじゃなくて、もっとパーソナルな関係の中で、男だって涙を流してすがってくる人もいれば、弱音を吐く人もいるでしょう。
恋愛の良いところは、男が鎧を着る前の、素の自分に戻ったときが見られること。もちろん、鎧を脱いだ姿を見られないまま関係が終わっちゃうこともある。でも素の姿を見られるところまで関係を深められたら、自分のそういう姿を見せた女に男は悪さをしないと思うの。まあ甘ったれて暴力を振るったり暴言を吐いたりする男もいるけど、そういうのはしょうもないから放り出す!
【アル】放り出そう! 鎧を脱いだ生身の男性と深く付き合ってみると、男性全体の見方が変わってくると。
【田嶋】そんなことは言えない。社会が男性主人公だから、男らしさ女らしさはしみついているから、その中で育った人は男でも女でもそう簡単に変われない。ただ人間同士だから、対等に何でも言い合える関係は作ろうと思えば作れると思う。あなたたち夫婦も16年も一緒にいられるなんて、そういう関係を築いてるからだと思う。
【アル】うちは友情結婚みたいな感じですので。
【田嶋】親友でしょう。男と女だって最後は親友だよね。お互いに鎧を脱いで安心していられる相手なんでしょ。それってすごく素敵なことじゃない。
神戸生まれ。著書に『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』『モヤる言葉、ヤバイ人』『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』他、多数。
元法政大学教授。元参議院議員。英文学・女性学研究者。書アート作家。シャンソン歌手。女性学の第一人者として、またオピニオンリーダーとしてマスコミでも活躍。津田塾大学大学院博士課程修了。イギリスに2度留学。『愛という名の支配』『ヒロインはなぜ殺されるのか』『我が人生歌曲』など著書多数。