どうすれば「サラリーマン脳」を捨てられるか

では、どうすればサラリーマン脳から脱却することができるのでしょう。

これはそれほど簡単なことではありません。なぜなら前述したように、会社の中で頑張って上を目指そうとすると、自分1人が突出した存在のままでいるというのは難しいからです。別に「事なかれ主義」でなければだめ、というわけではなく、最終的にものごとをスムーズに進めるためには、周りにも配慮しなければなりませんし、我を通すだけではうまくいきません。必然的にサラリーマン脳を続けざるを得ないのです。

個人的な開発、個人的およびキャリアの成長、進歩と潜在的な概念
写真=iStock.com/Jirsak
※写真はイメージです

では、そもそもいったい何のためにそんなことをするかといえば、ホンネでは、会社の中で偉くなりたいからですよね。実力主義とか成果主義といいますが、やはり人事は好き嫌いで決まることが多いものです。もちろん、上に気に入られても、仕事ができなければ話になりません。当然成果を出した上で、協調性とか人間関係を大事にしながら、うまくバランスをとりつつ仕事を進めていくのが理想です。結果として、自分のやりたいことを第一に主張するということはしないという「サラリーマン脳」になってしまいます。

でも、ここで少し発想を変えてみましょう。もし、会社の中で偉くならなくてもよいと思ったらどうでしょう。周りとぶつかろうが上に嫌われようが、主張すべきことは主張するという仕事スタイルにはなりませんか?

だとすれば、会社の中でそうなった時点から、発想を変えてみればいいのです。

“成仏”すればサラリーマン脳から脱却できる

私はいつも、50代の社員の人たちへの企業内研修において、「50歳になったら早く成仏しなさい」と言います。「成仏する」というのは、もちろん比喩的な表現であり、具体的にいえば、会社での立場とか出世を気にするのをやめよう、ということです。

40代のうちは、まだ、ひょっとしたら役員になれるかもしれないという希望を持っていたとしても、50歳を過ぎれば事実上、ほぼその可能性はなくなります。つまりその会社の中での出世はもう終わったということになるのです。

出世の見込みが消えることは素晴らしいこと

これは考えてみると、とても素晴らしいことです。それまで、仕事で成果をあげるだけでなく、「サラリーマン脳」をフルに使って周りに気を遣いまくり、いろんなことに我慢をしてきたのも、ひとえに、上からの評価を受けて出世したいという心の重圧があったからです。もうその可能性がなくなったのであれば、こんな気楽なことはありません。自分の思うことを素直に表せばいいのです。

大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)

もちろん、受け入れられる可能性は低いでしょうが、だからといって残念に思う必要もありません。そんなものと割り切ればいいのです。

かくいう私も50歳手前で、社内的にはあまり陽の当たらない部署に異動になり、気持ちを切り替えて“成仏”しました。そうすると、それまで見えていた世界とはまったく違うものが見えてきて、やりたいこともたくさん出てきたのです。

そうやって気持ちを切り替えるうちに、仕事だけでなく、趣味や生活の面でも、自分のやりたいことを考えられるようになってくると思います。人生の後半、会社生活の終盤では、この「サラリーマン脳」からの脱却がとても大切なことなのです。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。