他人が土足で踏み越えてはいけない「バウンダリー」
「子ども産むなら早い方がいいわよ」「子どもだけでも産んどいたら」「あなたにも子育ての喜びを知ってほしい」といった発言も余計なお世話のハラスメントになる。
この手の発言をする人はバウンダリー(境界線)がわかっていない。自分と他人はまったく別の人間なのだ。人それぞれ事情や生き方やセクシャリティがあって、それを他人に話したくない場合も多い。
そもそも恋愛や結婚や出産やセックスは個人のプライバシーであって、他人が土足で踏み入るべきじゃない。なのでこの手の発言をされたら「私は女として何か欠けているのかな」と悩むんじゃなく「この人は人としてデリカシーが欠けているな」と思おう。
ちなみに物書きや役者の友人たちも、表現の幅を広げるために恋愛しろだのセックスしろだの言われるそうだ。「恋愛やセックスをしなきゃ良いものは作れない」とドヤる人には「それ宮沢賢治に言うか?」と返そう。
繰り返すが、自分は差別なんかしないと思っている人ほど、うっかり差別的な発言をしやすい。自分も差別するかもしれないと気をつけて、差別しないために努力することが大切だろう。
「私は気にならない」で思考停止しない
また「無理に笑いをとろうとしない」ことも大切だと思う。サービス精神旺盛な人ほど、笑わせなきゃ、面白いこと言わなきゃと思ってやらかす場合が多いから。私も「面白さは正義」という風土の関西出身なので気をつけている。
最後に、誰かの不適切発言が炎上した際に「私は気にならないけど」と言う人がいるが、「私は気にならないけど」で思考停止するんじゃなく「気にならない自分はヤバいんじゃ?」と考えてみよう。そして、なぜ批判の声が上がっているのか? を調べてみるのがアップデートのコツである。その発言の何がどう問題なのか解説している記事などを読むと「なるほど、こういう部分が差別的なのか」と気づくきっかけになるから。
一人一人がアップデートを心がけることが、社会全体のアップデートにつながる。みんなでジェンダーを学んで、ヘルジャパンを少しはマシなジャパンにしよう。
神戸生まれ。著書に『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』『モヤる言葉、ヤバイ人』『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』他、多数。