ライブ配信もされ注目された“海のお葬式”
クジラの仲間は、死後沈むものと、沈まぬものがいるらしい。
詩の一節のようなこの事実を知ったのは、1月半ばのことだった。きっかけとなったのは、淀川に迷い込んだマッコウクジラ、通称「よどちゃん」だ。
1月9日に淀川河口で発見されたこのオスのマッコウクジラは、1月13日に残念ながら死亡し、1月19日に紀伊水道沖に海洋投棄されることとなった。彼の遺骸の行く末については大きな注目を集め、投棄の様子がライブ配信されるほどであった。
海底に沈んだクジラの遺骸は、多数の生物のよりどころとなり、独自の生態系を構築することが知られている。いわゆる「鯨骨生物群集」と呼ばれるものだ。1987年にその存在が初めて報告されて以来、さまざまなメディアに取り上げられ、多くの生き物好きに知られる現象となった。それゆえ、今回の海洋投棄についても「鯨骨生物群集が作られるのだろうか?」という声を数多く目にした。
自然界では「沈まぬクジラ」を沈めたのはなぜか
私自身は「陸上に埋設して骨格標本にするのかな」と思っていたため、海洋投棄が決まった時には、正直複雑な気持ちであった。が、同時に「ふむ、たしかに海に沈めたらどうなるのだろうか?」と興味も湧いた。そこで、日々のランチタイムや就寝前のまったり時間を駆使し、鯨骨生物群集について“調べ学習”をしてみることにした。
今回の記事ではその成果を紹介するので、今回の海洋投棄について「それが“自然な状態”だよね」と思った方にぜひ読んでいただきたい。なぜなら、今回海底に沈むこととなったマッコウクジラは本来「沈まぬクジラ」と言われているからだ。