地球温暖化で何度上がるのか

地球温暖化の予測にはいくつもシナリオがありますが、数十年後に何℃上がるかの予測は簡単ではありません。たとえば、大気の成分がどう変化するか、その変化がどの程度の気候変動につながるかまで考えなければいけません。そのためには、世界でどのようなエネルギーが(例:太陽光発電や原子力発電)、どういう状況で使われるのか、林業や農業などが新興国でどの程度広がるかまで計算しなければいけませんが、あまりにも不確実です。

とはいえ、よくわからないから気温が上がらないというわけではありません。何℃上がるかはわかりませんが、確実に気温は上昇しています。温暖化の影響はすでに、地球の姿を変えています。熱波や豪雨などの極端な気象が増えていますし、生きものの多くは暑さを逃れるために高い緯度の地域や標高の高い地域に移動しています。絶滅してしまった種もいます。食糧もこれまでと同じ場所で同じように生産できない例が確認されています。

温暖化は止めようがありません。唯一の救いが私たちの技術が進歩していることです。約50年前、地球から石油がなくなるとの危機が広がっていました。しかし、岩石を掘る新しい方法などを開発した結果、いまでは「石油がなくなる」という人はほとんどいません。温暖化についても数十年後にはまったく新しい解決法が発見されるかもしれません。それは誰にもわかりませんが。温暖化を自分のこととしてまず考え、むだな電気を使わないようにするなど、できることからはじめましょう。

これから氷河期がくる

温暖化対策は大きな課題ですが、地球の長い歴史で考えるとこれから寒くなっていくという考えがあります。いまの私たちは、地球史の視点からいうと氷河時代に生きています。氷河時代とは正確には、「氷期」と「間氷期」が数万年~10万年の周期でくり返される数百万年を指します。

みなさんは氷期と聞くと、マンモスを思い浮かべるかもしれません。私たちの祖先は雪と氷のなかで、長い毛に覆われたマンモスを狩っていました。そのマンモスは約1万年前にほとんど姿を消しました。氷期が終わりに向かったからです。現代はマンモスが消え、約1万2000年前に終わった氷期の後にはじまった間氷期に当たります。ですから、過去のサイクルに基づくと、現在は次の氷期に向かって徐々に寒くなっている時代とも考えられます。

こう聞くと「地球温暖化は心配要らないのでは」との声も聞こえてきそうです。しかし、人間が生み出す二酸化炭素の急激な増加による温暖化は地球のサイクルを壊してしまうほど深刻です。次の氷期の訪れは約5000年後と以前はいわれていました。いまでは少なくとも5万年間は次の氷期は来ないといわれています。人類はおよそ20万年前に出現し、厳しい氷期を生き残ってきましたが、いまはそれ以上の危機に瀕しているといってもいい過ぎではありません。

栗下 直也(くりした・なおや)
ライター

1980年東京都生まれ。2005年、横浜国立大学大学院博士前期課程修了。専門紙記者を経て、22年に独立。おもな著書に『人生で大切なことは泥酔に学んだ』(左右社)がある。

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