「終の棲家」としてマンション購入や買い替えを検討する中高年が増えている。定年退職や年金生活が迫る状況下での買い方の“コツ”はあるものか。近著『60歳からのマンション学』が話題のマンショントレンド評論家の日下部理絵さんは「『中高年だから』『もう60歳だから』と理想の住まいをあきらめてしまう人も多いのですが、高齢社会の現代では、シニア世代に優しいさまざま選択肢も広がっています」という──。

ライフステージが変わるときは、住まいを見直す大チャンス

人生100年時代。これからの長い人生を有意義に過ごすために、60歳や70歳にさしかかるタイミングで住まいを見直す人は多い。とくに定年退職や退職金の支給、子どもの独り立ちなどのライフイベントがある「60歳前後」は、老後の住まいを考える“絶好のタイミング”である。

しかも、シニア世代にとって、マンション売却の大チャンス到来中だ。

いまはバブル期並みのマンション価格の高騰期。都内では2000年代の新築マンションが、当時の購入価格以上の金額で取り引きされることも珍しくない。

マンション価格が高騰を続けるこの時代において、物件を所有し、すでにローンをほぼ返済しているシニア世代は、それだけで大きな資産を持っているといえる。

親から子に住宅の贈与のイメージ
写真=iStock.com/kazuma seki
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シニア世代とファミリー世代の需給が一致

さらに、「立地を重視して自宅のダウンサイジング(狭い部屋に住み替えること)を希望するシニア世代」と、「在宅勤務が増えて、家族でゆったり過ごせるファミリーマンションを探している若い世代」とで、需要と供給がぴったり一致するケースも多いのだ。

実際、国土交通省の「令和3年度住宅市場動向調査報告書」によると、住宅を初めて取得する世帯は「30歳代」がもっとも多いが、2回目以上の取得となる二次取得世帯は「60歳以上」がもっとも多い、という結果が出ている。