長期的に見てマスクは効果があるのか改めて考えたい

しかし、いくつかの国では感染が拡大しても取り立ててマスク着用率が高まるようには見えず、マスクの科学的感染抑止効果を認めながらも感染の長期的被害については着用の有無で大差が生まれないと考えているようにみえる。日本でも第8波で感染拡大した地域は第7波が比較的軽微だった地域であることが、感染症の専門家からも指摘されている。一度感染が拡大すれば免疫を獲得する人が増えることで次は軽微に収まる、もしくはマスクの着用などの感染対策により軽微に感染を抑えると免疫を持たない人が多いので次の波で増える……ということであれば、マスクの長期的効果を多くの人が実感することは難しくなるだろう。

マスクの短期的感染抑止効果を科学的見地から認めつつもこれまで定量化されていない「副作用」について考えてみたり、あるいは「波」が今後も永続的に繰り返されることを前提に長い目でどのようにウイルスと付き合うべきか考える必要もあるだろう。

※参考文献
Oswald, Andrew J., Eugenio Proto, and Daniel Sgroi. "Happiness and productivity." Journal of labor economics 33.4 (2015): 789-822.
高久玲音・王明耀(2023)「ポストコロナに向けた子どもたちの学校生活の現状――2022年6月の学校生活調査の結果と予備的解析――」『社会保障研究』第7巻(3号)国立社会保障・人口問題研究所

高久 玲音(たかく・れお)
一橋大学経済学研究科准教授

1984年生まれ。2015年に慶応大学で博士号取得(商学)。一橋大学経済学研究科准教授。専門は医療経済学、応用ミクロ計量経済学。全世代型社会保障構築会議構成員も兼任。