航海術の発展で、ルートは陸から海へと変わった
ルートの重要性を念頭におくと、かつてヨーロッパに世界帝国が誕生した理由が見えてきます。
1300~1400年代、ヨーロッパよりも、むしろアフリカやアジアのほうが経済的に強い時代がありました。それが急速にヨーロッパの国々が力を得て、次々に帝国を生み出したのは、ポルトガルやスペインで航海術が発展したからです。
ヨーロッパを出発した船は、大西洋を南下し、アフリカ回りで喜望峰を通り、インドまで行って交易を行っていました。シルクロードという陸のルートもありましたが、海のルートに比べると規模がはるかに小さいものでした。
そもそも海は平らなので、そこに物を浮かべたら、弱い力でも引っ張って移動できます。ですから、たとえ船5隻で出発して、難破などして戻ってくるのが1隻だったとしても、高価な香辛料を大量に安く運ぶことができるためもうかるのです。
陸から海にルートが変わり、さらに運ぶ量を増やすことで、ヨーロッパにどんどん富が集中し、国力がドカンと上がりました。
そして1600年代にはオランダ、1700年代からイギリスが覇権を握るように。海運がさらに発展し、やがて世界の4分の1を植民地化して「太陽の沈まない国」と呼ばれるようになりました。
しかし1800年代からアメリカが国力を上げ始め、イギリスをしのぐようになります。もともとアメリカには、経済を発展させやすい広大な国土があったため、安いものを大量生産できるシステムをつくりやすかった。歴史がないぶん、規制もなく革新的な町工場をつくりやすい土地柄だったのです。ヨーロッパからも移民が集まり、どんどんイノベーションが起こり、生産力も上がっていきました。
やがて98年に米西戦争でスペインに勝利したアメリカは、カリブ海を制覇すると同時に、フィリピンをめざして太平洋に進出しました。またパナマ運河を建設し、太平洋と大西洋をつなぎ、海のルートを確立していきました。
物を安く効率的に運ぶ、海運という貿易システムをつくったアメリカは、経済的にも強くなっていったわけです。
日本もアメリカと海の支配権をめぐって戦争を起こしています。太平洋戦争です。結局、1945年に太平洋の覇権をアメリカに受け渡しましたが、アメリカのシステムに頼る形で結んだのが、日米同盟なのです。