必要なのは当たり前のコミュニケーション
誰もが「誰も何も言わないのはおかしい」と思っているだけの組織では、泣き顔の新入社員を助けるのに、テクニカルな手法などはあっても仕方ありません。むしろ、当たり前のコミュニケーションが必要とされているのです。
電車の中で、目の前に高齢者が立っても席を変わろうとしない若者がいたとしましょう。高齢者の周りには、あなたと何人かの人が立っています。そのときにあなたと何人かの人たちが、その若者に注意をするかどうか。
起きていることは、これとまったく同じ次元のことなのです。
こういうシーンすら見て見ないふりをする人は、あまりにも多いですよね……こう聞いて「いや、そんなことはない」と思う人は、ぜひ泣き顔の新入社員には声をかけてあげてください。
求められているのは、必ずしもすべてを完璧にケアできる誰かの行動ではなく、また、「こんなことを言ったら、自分が責められるかもしれない」と心配することでもなく、コミュニケーションを取って、「あの、すみません。こうできるんじゃないですか」と伝えることなのです。
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。