海外との温度差は大きい
実際、海外では性別に関係なく誰でも利用できるトイレの設置が進んでいます。ジェンダー問題に関心の高い人々がしっかり声を上げたからとも言われていますが、日本でもそうした声を上げる人は少なくありません。それでも海外のほうが設置が進んでいるのは、社会の「そうした声に対処しよう」という熱量が違うからではないかと思います。
日本でも少しずつ取り組みが進んではいるようですが、急激にオールジェンダートイレを増やすのは難しいでしょう。国民の意識を急に変えることの難しさもありますし、狭い日本では設置スペースの問題もあります。現状の男女別トイレを残しながらその横に誰でも使えるトイレもある、そうした場所を少しずつ増やす形で進んでいく可能性が高そうです。
場所によって違う共有トイレの許容度
ただ、公共の場にオールジェンダートイレしかない場合、何となく気まずいという人もいるのではないでしょうか。僕自身、カフェなどで男女共有の個室トイレの前で待っているとき、女性が出てくると「後に男性が入ったら嫌だと思うんじゃないかな」と変な配慮をしてしまい、少し気まずい気持ちになってしまいます。
トイレは、それをどこで誰と共同で使うのかによって感じ方がかなり変わってきます。駅やカフェで不特定多数の人と使うのか、職場で顔見知りの人と使うのか、あるいは家で家族とだけ使うのか。
自宅で家族とトイレを共有することに気まずさを感じる人は少ないと思いますが、例えば職場のトイレが急にオールジェンダートイレだけになったら、顔見知り同士という微妙な距離感のせいで気まずさを感じる人も出てくるでしょう。公共の場のものでも僕のように気まずさを感じる人もいるかもしれませんが、知らない人同士で使うものだから許容できるという側面はあるように思います。
こうしたトイレ議論が出てくるということは、必要な区別と不必要な区別について考える人が増えているということでもあります。僕はその点がいちばん興味深いと感じています。