令和の国葬、終わる
9月27日、長き論争を巻き起こした令和の国葬が終わった。この気持ち、そして空気は何かに似ている。ああそうだ、2020東京五輪が2021年に無観客開催決行された後の、激論と分断に燃え尽きた日本の焦土のにおいだ。
この夏、筆者は他社の各連載でも、安倍氏暗殺(あえてそう表現する)と山上容疑者、そしてある種の踏み絵となって世論を二分した国葬の話題を書き続けてきた。いま踏み絵と述べたように、この2カ月超を通して、国葬支持の如何論は安倍元首相への純粋な弔意をはるか後方へ置き去りにし、どこか敵と味方を区別するリトマス試験紙のような趣を帯びていた。
まさにその踏み絵を踏むのか、それとも踏まぬのか。日本のメディアの中でも、特に各民放テレビ局は国葬当日にそれを「どう報じる」のか、「そもそも(特番を編成するなどして)報じるのか」で各々の政治姿勢を明確にした、いや、せざるを得なかったといえるだろう。
「安定のテレ東」「パンクなテレ朝」「日テレの本気」
そのテレビ各局の様子を新聞各紙もまた注目しており、国葬前々日25日配信の朝日新聞デジタル記事では、「安倍元首相国葬、各局が特番・枠拡大で中継予定 テレ東だけ独自路線」と報じていた。
この時、世間は一度、有事にもいつもと変わらずのんびりした番組を流し続けることでネット的ミームとなってきた「安定のテレ東」が、期待にたがわず5分だけの特番を流すことに喝采した。その傍ら、テレ朝がむしろ「反安倍」的関心から人気情報番組「大下容子ワイド!スクランブル」を午前10時25分から5時間超の大特番へと拡大して国葬を報じることも大きな関心を引いた。
また、日本テレビが「半世紀ぶり『国葬』歴史的1日完全中継」と題し、夕方ニュース枠最強の視聴率とアナウンサー支持を誇る報道番組「news every.」を約2時間前倒しして、国葬開始午後2時からをカバーする午後1時45分に持ってきたことも「日テレの本気」と評された。
TBSは、視聴者支持が高い異例のCBC制作レギュラー番組「ゴゴスマ」で中継を放送することを発表した。かつて週刊文春の「好きなアナウンサーランキング」でキー局アナたちに混じりトップ5入りした異能の元地方局アナ・石井亮次を、賛否両論で難しいナショナルイベント中継のマウンドに立たせるという判断に、TBSの本気もまた見えたのだった。