「タバコでストレス解消」は幻想

特に喫煙者は、タバコについても誤解をしている人が多いように思います。「タバコを吸うとストレス解消になる」というのは幻想です。これは、体の依存と心の依存、両方の理由があります。

ふだんタバコを吸っている人は、ニコチンが切れると、イライラする、集中力がなくなる、気分が落ち込むなど、「離脱症状」といわれる禁断症状が出ます。これが体の依存です。

そんなふうに離脱症状でイライラしているときにタバコを吸うと、ニコチンが体に入って、不快な気持ちが解消されます。イライラがおさまって、タバコはストレス解消に効くと思ってしまいますが、これは単に、離脱症状を緩和させているにすぎず、ストレス解消になっているわけではありません。ただ、それを知らずに「タバコはストレス解消に最適だ」と思うと、より心の依存が強くなっていくのです。

タバコは、急にやめようとしても離脱症状が強く出てしまい、それに耐えられずに結局また吸ってしまうことが多いものです。ですから、やめたい人は禁煙外来がおすすめです。病院なら薬を使って、体に入ってくるニコチンの量を徐々に減らしていくことで離脱症状を緩和させながら、より禁煙の成功率を高めることができます。

楽しい、心地いいと実感できるか

ストレス解消の方法には、唯一の正解というのはありません。

いくらメディアで「○○はストレス解消に最強」「これならエビデンスがあります」と言っていても、自分に合わなければストレス発散の効果はあがりません。

「運動がいい」と言われても、運動が大嫌いな人にとっては、逆にストレスになってしまうでしょうし、続きません。サウナも、「気持ちがいい」と感じる人がいれば、「しんどくて不快」と感じる人もいます。

自分が「楽しい」「心地いい」という気持ちが持てる方法は、人によって違います。映画、観劇、お笑い、運動、温泉、サウナ……、自分に合ったものを探して、上手にストレス解消してほしいと思います。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。