マネジメント層が素人質問をするときは「枕詞」に注意

若手でなく、シニアメンバーやマネジメント層であったとしても、枕詞に注意すれば十分に「素人」に戻ることができます。

コミュニケーションビジネスパーソン
写真=iStock.com/emma
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「ごめん、前提がわからなくなっちゃったのだけど、これってどういうことでしたっけ?」
「古参の自分が言うのもなんなのだけれど、この会社ってどうして『健康的な美しさ』にこだわってきたのでしょうね?」

安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
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マネージャーとしての説明責任を果たせなくなってしまっては本末転倒ですが、むしろ立場が上の人が率先して疑問を呈してくれることで、「実はよくわからなかったけど、聞きにくかった」という空気を一気に打破できるかもしれません。

立場が上だからといって、正解を知っているわけではないということを場に共有することで、チームの心理的安全性を高められるのです。チームにおいては誰もが「素人」として、前提に疑問を投げかける権利を持っていることを、覚えておいてください。

余談ですが、「素人質問で恐縮ですが」という枕詞は、学会発表でもよく耳にするフレーズでもあります。この場合、教授などの専門家が、相手の初歩的な不備を指摘するときに使われます。くれぐれも、相手を攻撃する嫌味な使い方にならないように、ご注意を。

安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
MIMIGURI代表Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。