あおり運転をする人は、SNSなどで誹謗中傷して炎上に加担する人とも似ています。しかし、インターネットでは顔が見えませんが、あおり運転は顔が見えますし、素性がバレやすい。大きなリスクがあるのにあおり運転がやめられないのは、本人の中に「自分は正しく、相手が間違っている。だから正してやっているんだ」というゆがんだ正義感があるからです。
「お先にどうぞ」の運転が自分を守る
あおり運転をされないためには、「人の邪魔にならない運転をする」しかありません。
なぜなら、あおり運転の加害者があおり運転をするのは、ゆがんではいますが理由があるからです。こちらはそんなつもりがなくても「突然割り込んできた」「邪魔になるほどゆっくり走っている」と、それを理由にあおってきます。
ですから結局は、「お先にどうぞ」という気持ちを持ちながら運転することが自分の身を守ることになります。車線変更をするときは、十分に余裕をもってウィンカーを出す。走行中は車間距離を取る。クラクションも、なるべく鳴らさないようにする。クラクションは、こちらは注意喚起のつもりでも、勝手に威嚇や憂さ晴らしのために鳴らしていると思われ、逆切れされやすいからです。
イライラしたら意識をそらす
自分があおり運転をする側にならないよう、気を付けてほしいとも思います。冒頭でもお伝えしましたが、あおり運転は誰でもする可能性があります。空腹だったり、寝不足だったり、疲れてストレスがたまってるときに、前の車がモタモタしていたりすると、そのつもりがなくても、ついあおり運転をしてしまうかもしれません。
自分がイライラしていると気付いたら、そのイライラから意識をそらしましょう。ガムをかむ、ラジオを聴く、大声で歌う、窓を開けて風を感じる、など、何でもかまいません。
また、相手の車が目に入るから攻撃したくなるわけなので、「イライラする運転をしているな」という車に出会ったら、いったん近くの駐車場に入って車を止めて、相手の車が見えなくなるまでやり過ごすとよいでしょう。
理想的なのは、空腹や寝不足、疲労などでイライラしやすい時には、車の運転を控えることです。車内ではストレス発散の方法も限られてしまい、あおり運転だけでなく、事故にもつながりかねません。
助手席に座っている人は、運転者がイライラしていると感じたら「ちょっと休憩しよう」と声を掛けてあげてください。運転手は、自分で自分のイライラ度合いがわからないこともあります。「ちょっとトイレに行きたいから休憩しよう」と言えば、運転手も止まってくれるでしょう。
あおり運転は、ひとごとではありません。誰もが加害者にも被害者にもなり得ます。あおり運転の背景にある心理や傾向を知り、安全にドライブを楽しんでください。
構成=池田純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。