夫婦同程度の収入ならば自分の年金受給額に目を向ける

共働き夫婦で、夫の厚生年金と妻の厚生年金が同じ、または多いという場合には、どちらにしても遺族厚生年金はありません。

この場合の対策としては、自分の年金受給額を増やすことがもっとも重要になってきます。ということは、基礎年金と厚生年金の両方を繰り下げることによって年金の増額を考えるのがいいと思います。

つまり、おひとり様になったとしても、困らない年金額を目指すのがいいでしょう。

たとえば、夫と妻の厚生年金額が同じ場合。

夫は基礎年金6万円+厚生年金14万円=月額20万円
妻は基礎年金6万円+厚生年金14万円=月額20万円

どちらが先に亡くなっても、遺族厚生年金はありません。月額20万円の生活になります。

しかし、夫婦ともに70歳まで繰下げ受給をして受給額の増額をしておけば、年金受給額は、28万4000円になります。どちらが亡くなっても、ある程度の暮らしを維持できるようになります。老後資金をしっかり貯めておくとなお安心できるでしょう。

専業主婦でもゆとりのある年金生活を送るには

専業主婦で考えてみましょう。

夫の基礎年金6万円+厚生年金12万円=月額18万円
妻は基礎年金6万円のみ=月額6万円

この場合の遺族厚生年金は、9万円になります。

妻の基礎年金6万円+遺族厚生年金9万円=15万円になります。月額15万円の老後生活というのは、先ほどの厚生労働省の「家計調査(2019年)」の調査によると、高齢単身無職世帯の毎月の平均支出と同じです。ですので、生活費には困らないかも知れませんが余裕のない生活になります。

夫の厚生年金の4分の3といっても、基礎年金がなくなるので、夫婦のときの半分近くになってしまいます。これまた二人の生活が一人になったからと言って生活費が半分になるわけではありません。

長尾義弘『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)
長尾義弘『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)

では、対策としては、どうすればいいのでしょうか。先ほどの共働き夫婦と同じように基礎年金の繰下げ受給はどうでしょう。

もし、75歳まで繰り下げることができれば、84%の増額になるので、妻の基礎年金は約11万円になります。遺族厚生年金と合わせれば、20万円になります。少しゆとりのある老後生活が送ることができるようになると思います。

どんなに仲が良い夫婦でも、最後はおひとり様になってしまいます。これは避けることができないことでもあります。そして残念ながら女性がおひとり様になる確率の方が男性よりも高いのです。そのための備えとしては、たとえ一人になったとしても、暮らしていける年金額を確保しておくことです。そのための対策をしっかりしてください。

長尾 義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表、ファイナンシャルプランナー、AFP

徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春出版社)、監修書には年度版シリーズ『NEW よい保険・悪い保険』(徳間書店)など多数。