代理出産をテーマにした新刊『燕は戻ってこない』が好評の作家・桐野夏生さん。次々とパワフルな作品を生み出す桐野さんの執筆の原点、そして作家集団である日本ペンクラブ会長として成し遂げたいこととは――。
群衆の中でたった一人の女性
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執筆は連載の前回分を読み直すところから始める

——桐野さんの小説を読むと、魅力的なキャラクターと読者を惹き込むストーリー展開、そして「自分ならどうするだろう?」という余韻が残ります。書き始める際はどこまで結末を決めているのでしょうか。

【桐野夏生さん(以下、桐野)】意外と行き当たりばったり(笑)。連載の締め切りが近づくと、前の号の原稿を読み直すというところからスタートします。『燕は戻ってこない』も結末を決めずに書いていたので、展開を気にかける担当編集者から「完結はいつごろでしょうか……?」と尋ねられたことも。

テーマだけ決めて、ストーリーは具体的に考えずに書き始めることが多いです。今回は代理出産がテーマだったので、資料を読み込んだり卵子提供のリスクを研究している方などに会って話を聞いたりしました。できれば代理出産で子どもを授かった人のお話も聞いてみたかったのですが、国内ではお会いできなかったですね。だから頭の中でイメージを膨らませて書きました。

生殖医療はどんどん進化しているので、日々情報との格闘。インドでの代理出産が法律で禁止になったりと、執筆中から書籍刊行までに変わったこともたくさんありました。

——実際の事件をモチーフにした著書も多数あります。新聞やニュースを見てテーマを思いつくこともあるのでしょうか。

【桐野】あります。本作にも出てきた通り、代理出産といえばウクライナが有名ですが、戦時下で代理母が産んだ子どもを依頼者が迎えに行けないという事態が起きているそうです。ニュースを見ながら、この子たちは今後どうなるのかと考えました。ここで産まれた子どもたちのことを書いてみたいというイメージは持っています。

——次回作が今から楽しみです。桐野さんの刊行ペースを見る限り、筆はかなり早いほうだとお見受けしました。1カ月にだいたいどのくらい書いていらっしゃるのでしょうか。

【桐野】今は連載全て合わせると月に100枚ほど。朝から晩までかけて20枚くらい書くこともあれば、書き出しがうまくつかめずにこれというものに出会うまでは数日かかることもあります。

締め切りに余裕がある日は家で配信のドラマを見たり本を読んだり。映画を見に行くこともあります。でも平日はなんだかんだと用事がありますし、打ち合わせやオンライン会議をすることも多いです。