重視すべきは「相対リスク」ではなく「絶対リスク」
あるいは、父親の年齢と子どもの先天異常のリスクの話に戻れば、2015年に、10代で父親になると、“自閉症、統合失調症、二分脊椎”の子どもが生まれる可能性が高い――「デイリー・メール」によれば30パーセント増――と報じられました(※4)。
30パーセント増とは恐ろしく聞こえます。20パーセント、いや18パーセントでも同じです。これらは皆、意味ありげな数字です。まるで、ベーコンを食べると大腸がんになるリスクが20パーセントだとか、父親が20歳未満だと二分脊椎の子どもを持つリスクが30パーセントだというように聞こえるかもしれません。
もちろん、そういう意味ではありません。リスクが30パーセント増えるとは、リスクがXというレベルから、Xの1.3倍に高まるという意味です。だから、Xがどのくらいかを知らなければ、この数字は大して役に立ちません。だからこそ、これを絶対リスク(リスクの絶対値)で、すなわち、単にどのくらい変化したかではなく、何かが起こるのは実際にどのくらいなのかで示すことが重要なのです。
1日1枚のベーコンは大腸がんリスクを7%から8.4%に増やす
ベーコンを食べる人の大腸がんリスクの例で考えてみます。まず、イギリス人が一生のうちに大腸がんになるもともとのリスクは、イギリスがん研究基金によれば、男性は約7パーセント、女性は約6パーセントです(※5)。
明らかに、これは無視できない数字です――性別にもよりますが、ほぼ15人に1人は大腸がんになるというのですから。でも今は、20パーセント増が何を意味するかを見ていきましょう。
もっとも大きい推定値を取ることにしましょう。あなたはイギリス人男性で、大腸がんになるもともとのリスクは約7パーセントです。1日に薄切りベーコンをもう1枚(約25g)多く食べると、リスクを20パーセント押し上げます。
しかし、思い出してください――7パーセントの20パーセントは1.4パーセントです。つまり、リスクは7パーセントから8.4パーセントに増えます。パーセントの扱いが不注意だったり、慣れていなかったりすれば、20パーセンテージポイント増える、すなわち27パーセントになると考えてしまうかもしれませんが、そうではありません。