SNSにあふれる若い女性の「主人大好き」
若い女性は、新婚だと特に「主人」を品の良い呼び方だと誤解するのだろうか。
佐々木希に限らず、20~30代の芸能人や読者モデル出身のタレント、インスタグラマーなどの対外的な発信の中に、自己反省の欠如した流行なのか「主人」があふれかえっている。「主人大好き」。他人の視線の前で幸せオーラを漏れ出させながら、そう呼ぶ自分のキラキラとした笑顔も好きそうだ。
だが仕事場で自分の夫を「主人」と呼ぶのなら、「あなたは自分の夫に仕えているのか」「あなたのボス(上司)は夫なのか」と問われても仕方ない。そういう女がプロフェッショナルとして尊重されるだろうか? 立派に芸能人として人気を確立し、さまざまな需要に応えている仕事人のあなたは誰なのか。「夫」という配偶者のいる「妻」なのか。「主人」の「家来」なのか。
不倫報道の時から、公の場に向けて「主人」を連呼する佐々木希のコメントは、だから大人の女たちを辟易させた。「あんまり深く考えない子なのかな」「タレントイメージの演出なのだろうけれど、こういう不倫報道のあとに主人という言葉が多用されること自体がストレス」。すると、共感は逃げてゆく。頭のいい女を好む男たちもまた、「佐々木希はねえ……」という感想を持つようになる。
渡部叩きの反作用としての「佐々木希支持」
大人たちの間では、佐々木希の周りの大人は何をやっているんだ、という余計な心配も広がる。夫の不倫報道直後の「佐々木希支持」で世間に肯定されたと思ったのか、それとも本人が周りの言うことを聞かないほど強固な信条の持ち主だというのか?
だが不倫報道直後の「佐々木希、立派」という論調は、あくまでも渡部建がボコボコに叩かれていることへの反作用であったことを見逃してはならない。「こんな渡部建に比べて、妻の佐々木希は頑張っているよなぁ」という同情を、額面通りに受け取ってはいけないのである。
過剰な「古風で健気」路線。そこまで徹する姿勢をなかなかやるなと評価し、支持に回った向きも、あるにはある。ただ大人の目から見ると、夫の側にも妻の側にも現時点では共感できる材料の少ない夫婦であることは否定できない。今後の彼ら2人が、夫婦として成長する中で変わっていくのを願っている。
1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。