日本人は他人の足を引っ張りたがる

日本社会が不寛容であることは、学術的な調査研究でも明らかとなっています。大阪大学社会経済研究所の西條辰義教授(現高知工科大学経済・マネジメント学群特任教授)らの研究によると、被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人は米国人や中国人と比較して他人の足を引っ張る傾向が強いとの結果が得られたそうです。

この研究は被験者にゲームをしてもらい、公共財に投資をすると自分はその利益を得られる一方、公共財であることから相手にも利益があるという状況を想定し、被験者がどのような行動を取るのか確かめるというものです。

仮に相手が投資を行わなくても、自分が投資すれば自分は利益を得られますが、相手はその投資にタダ乗りしますから、何もせずに儲かることになります。こうした状況に遭遇した場合、被験者の行動は人によって大きく変わります。

相手がタダで利益を得ているといっても自分も儲かるので投資は行うという人と、相手がタダ乗りするのは許せないという感覚から、自分の利益が減っても、相手の利益をさらに減らそうとする人に分かれるのです。

壁に寄りかかり頭を抱える人
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他人の足を引っ張る行動が組織の秩序を保つ

自分の利益が減っても相手を陥れようとする行為を学術的にはスパイト(悪意、意地悪)行動と呼びますが、似たような実験を日本人、米国人、中国人に対して実施し、その結果を比較したところ、相手の利益をさらに減らそうとするスパイト行動は日本人に特に顕著だったことが明らかとなりました。

日本人は他人の足を引っ張る傾向が強いということですが、この実験ではさらに興味深い現象も導き出されています。日本人は他国よりもスパイト行動が顕著なわけですが、この実験を繰り返していくと、他人の足を引っ張る行動が制裁として機能するようになり、徐々に協力的になっていくという結果が得られたのです。

日本人はよく他人の足を引っ張りますが、一方で、他人からの制裁を恐れ、過剰なまでに組織や上司に忠誠を誓うというケースもよく見られます。日本の長時間残業やサービス残業はその典型かもしれませんが、他人の足を引っ張る行動が、恐怖を生み出し、これが逆に組織の秩序をもたらしているわけです。