子どもが不登校になったら…

ですから、生きることが苦しくてつらくなった時には、まず自分の人間関係を正面から考え直しましょう。イライラした時は、「なぜこんなにイライラするのだろう?」と考えてみるのです。

例えば子どもが不登校になったら、「私の子どもへの接し方に、どんな問題があるのだろう?」と考えます。

自分の意識領域に気づけば、その内面的な要因の発見が新しい洞察力を生み出します。シーベリーは、「内面的要因を発見するということが、不安の積極的な解決」と言っています。

我々は、みんな努力していますが、その中には途中で燃え尽きてしまう人もいます。

なぜそうなるかというと、「exclusively」、つまり排他的に努力しているからです。残念ながら、努力の方向が間違っている場合が多いのです。

逃げる努力(不安の消極的解決)ではなく、立ち向かう努力(不安の積極的解決)をしてください。立ち向かう努力なくして、人生にハッピーエンドはありません。逃げる努力をどんなに続けても、ハッピーエンドにはなりません。

人生があなたを捨てることはない

自分の人生を捨てるようなことを口にする人もいますが、大切なのは過去にさかのぼり、「なぜ自分に価値がない人間という自己蔑視のイメージを持つようになったのか?」「その要因となった人間関係は、どういう人間関係だったのか?」を考え、自分自身を再教育することです。

「自分を追い込んだ」「誤った価値観を身につけてしまった」その源を辿っていくことが、すなわち人格の再構成になると思います。

「私は人生に失敗している、私は生きているのが怖い、私は生きている意味を見失っている」という現実を認めるのは苦しいことです。

しかしそれを認めるからこそ、アドラーの言うように、苦しみは解放と救済への扉となるのです。「認める」ことによって、ロロ・メイが言う「意識領域の拡大」があり、カレン・ホルナイが言うように「内面の自由と力」が獲得できるのです。

あなたが人生を捨てたのであって、人生があなたを捨てることはありません。

加藤 諦三(かとう・たいぞう)
早稲田大学名誉教授

ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員。『人生を後悔することになる人・ならない人』など著書多数。