仕組みの大きな変更は避けられない

明治の皇室典範は歴史上初めて皇位継承資格に「男系男子」という極めて窮屈な“縛り”を導入した。一方で、そうした窮屈な条件を緩和するために、前近代以来の側室制度を前提とした非嫡出・非嫡系による継承を公認した。

ところが、現在の皇室典範は、その男系男子限定と非嫡出・非嫡系容認という“セット”でのみ持続的に機能し得る「仕組み」のうち、前者はそのまま踏襲しながら、後者は全面的に排除するという「皇位継承法の根本的変革」に踏み切った。それは当然ながらもはや後戻りできない既定の事実になっている(前掲『天皇・神道・憲法』は男系維持のために非嫡出・非嫡系による継承の復活を唱えていたが)。

したがって、皇位の安定継承、皇室の存続を望むならば、その「根本的変革」に対応すべく、「仕組み」の「大きな変更」が避けられない。小泉純一郎内閣当時の「皇室典範に関する有識者会議」の報告書(平成17年〔2005年〕11月)は、まさにその課題に真正面から応えようとしたものだった(同会議のヒアリングには私も応じている)。この度、有識者会議が設置されたのも、国会からの要請により、改めてそこに切り込むことが期待されたからだった。

ところが先のような言い訳によって、先延ばしできないはずの喫緊の課題に手を着けないまま、又ぞろ先延ばししようとしている。

このような「白紙回答」同然の検討結果を受け取って、国会はどう対応するのか。皇位継承を巡る政治の動きはハッキリと新しいステージに入った。

国会側は最初の対応として、1月18日に衆院議長公邸に全政党・会派の代表者が集まって、政府側から検討結果の説明を聴いた。この場での質疑応答の中で、特に注目すべきなのは、立憲民主党の野田佳彦「安定的な皇位継承に関する検討委員会」委員長と政府側とのやり取りだ。

国会議事堂
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