写真館や卒業アルバムメーカーにも恩恵

そもそも、卒業アルバムの印刷を請け負う企業は、卒業アルバム専業の中小企業が多い。しかし、卒業アルバムは年末から卒業式までの間の限定的な時期に制作されるため、短時間に多くの業務が集中し、ピーク時の人材確保も難しくなっていた。1つ写真の差し替えや修正が発生するたびに、校正紙を印刷して学校に通う必要もあった。

「学校の先生方や写真館の方だけでなく、印刷業界の人材不足対策や働き方改革にも何か力になれないかと2018年から開発を始めました」と山中さんは語る。

その年の行事写真を、年末近くになって一気にプリントアウトして選定作業を行うのではなく、行事のたびに写真をクラウドに写真をアップロードし、画面上で選定作業を行っておけば、作業を短期間に集中させずに済む。また、AIによる顔認証技術によって、選定作業そのものも大幅に楽になるほか、ほとんどの作業が画面操作だけで終わるため、担当する教員や保護者も、「作業を少しずつやっておこう」という気持ちになりやすい。

AIを活用した卒業アルバム制作ソフト「アルバムスクラム」を使って写真選定を行う保護者ら。2021年12月、埼玉県さいたま市のさとえ学園小学校で
写真提供=エグゼック
AIを活用した卒業アルバム制作システム「アルバムスクラム」を使って写真選定を行う保護者ら。2021年12月、埼玉県さいたま市のさとえ学園小学校で

行事写真販売にもようやくICT化の波

AI技術を卒業アルバム制作に取り入れたことで注目を集めるエグゼックだが、同社の主力は学校やスポーツイベント向けのインターネット写真販売システム「フォトストア」だ。

「当社では、学校やスポーツイベント向けの、インターネット写真販売システムを販売してきたのですが、コロナの影響で行事やイベントが中止になり、2020年の春から夏にかけては売り上げが7、8割も減少しました」と山中さんは振り返る。

しかし2学期に入ると、「コロナ禍であっても、卒業アルバムの写真はそろえてあげたい」と、代替イベントを実施する学校も増えた。保護者が参加できないイベントが増えたが、「写真だけは欲しい」というニーズも増え、これまで写真販売のオンライン化をしていなかった学校も、廊下に写真を張り出して保護者に見に来てもらうわけにもいかないことからオンライン化が進んだという。「感覚的な数字ですが、コロナ前は写真販売をオンライン化している学校は3、4割程度でしたが、今はだいたい半数くらいの学校がネット販売をするようになったのではないでしょうか」と山中さんは語る。