会議が袋小路に入り込んだワケ

①②はどちらも妥当性を欠き、実現可能性の点でも疑問がある。

さらに、それらの方策では、秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下のご結婚相手が必ず男子を生まなければ、これまでの皇統による皇位の継承が行き詰まってしまう事態は、何ら改善されない。ご結婚相手にとって想像を絶するような重圧を放置したままでは、ご結婚のハードルが絶望的に高くなってしまいかねない。

同会議は、どうしてこのような袋小路に入り込んでしまったのか。理由ははっきりしている。冒頭に述べたように、自らに与えられた皇位の安定継承への方策を探るという、本来の課題から逃げ出してしまったからに他ならない。

長く「男系」による継承を支えてきた側室制度がなくなり、天皇・皇族の正妻以外の女性から生まれた子(非嫡出子・非嫡系)には継承資格が認められなくなった。にもかかわらず、明治以来の「男系男子」という窮屈な継承資格の縛りだけは、相変わらず維持している。それこそが皇位継承の将来を危ういものにしている。

つまり、現在の皇室典範のルールのあり方そのものが問題の根源なのだ。

「女性天皇」「女系天皇」なしに安定継承は望めない

それなのに、同会議は見直されるべきルールを前提にした現在の継承順序を「ゆるがせにしてはならない」(7月の中間整理)などと決めつけて、自縄自縛に陥ってしまった。

しかし、皇位継承順位第1位の秋篠宮殿下は天皇陛下よりわずか5歳お若いだけで、ご高齢での即位を辞退される可能性について自ら言及されたことも報じられており、宮内庁もそれを否定していない。法的にもそれは可能なので(皇室典範3条。園部逸夫氏『皇室法概論』)、継承順序が変更される可能性は、制度改正とは関係なく、現にあるのだ。

皇位の安定継承を目指すならば、女性天皇・女系天皇を可能にする皇室典範の改正に踏み出す以外に、進むべき道はないはずだ。小泉純一郎内閣に設けられた「皇室典範に関する有識者会議」の報告書の結論は以下の通りだった。

「皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが必要であるとの判断に達した」
「我が国の将来を考えると、皇位の安定的な継承を維持するためには、女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠」と。

今回了承された骨子を基に正式な報告書が政府に提出されると、やがて舞台は国会へと移っていく。そこでどこまで本筋の議論に立ち戻ることができるか。国会の真価が問われる。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者

1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録