「ベンチャー」「大手」で選んでいいのか

転職活動では、自分と志望先企業の相性を見極めることも大事です。仕事を探す際にまず重視してほしいのは、自分の能力を生かせそうかどうか、相手に貢献できそうかどうか、そして相手から必要とされそうかどうか、の3つ。

まずは、この3つを見て応募先の候補を抽出してみてください。その上で、社風や働き方などを比較検討していくのがいいと思います。

現在の転職市場は、ITエンジニアなどの一部の職種や高い専門性を持っているスペシャリストを除けば、ほとんどの職種が買い手市場になっています。特に35歳以上の人はなかなか採用されにくく、転職先が決まるまでに時間がかかる状況が続いています。

こうした状況の中で、最初から転職先を「ベンチャー」「大企業」などの属性で絞ったり、社風や働き方で絞ったりすると、ただでさえ少ない選択肢をますます減らすことになってしまいます。

「大企業出身」は武器にならない

ずっと大企業に勤めていて、35歳以上になってから初めて転職活動をする。こうした人の中には、転職活動の初期には「大企業での経験があるのだからいくつか応募すればすぐ受かるだろう」と楽観的に考えている人も少なくありません。

早いうちに内定をもらえたのに、「もう少し好条件のところがいい」と見送り、その後何十社も落ち続けた人もいます。転職活動は長引けば長引くほど不安が募りますし、その間に年齢が上がれば採用される確率はさらに少なくなっていきますから、今の市場では楽観は禁物と言えるでしょう。

しかし選択肢は少なくても、せっかく転職するのなら生き生きと働ける場へ行きたいもの。自分が転職先でそう感じるために「これだけは譲れない」と思うものは何か、ぜひ一度問い直してみてください。

たとえ苦労は伴っても新しい挑戦や成長の実感なのか、企業規模や社風なのか、それとも年収や休暇などの条件面なのか。そうした優先事項をあらかじめ自分の中で決めておき、合致する企業に選ばれるチャンスがあればためらわずにつかむ。それが転職の成功につながるのではと思います。

構成=辻村 洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。