何がはやったかより、なぜはやったかが重要

こうしたトレンドを知っておくことは、お酒離れしている若者を振り向かせる上で有効ではないでしょうか。最近の若者はお酒を飲まないと言われますが、パリピごっこやチャミスルチャレンジが流行した際には、それをまねしたいがためにお酒を購入した若者も多くいました。

しかし、じゃあクライナーファイグリングやチャミスルに似た味の商品をつくれば若者に売れるのかと言えば、それは違います。重要なのは、若者にどんなお酒が売れたかよりも、彼らがなぜそれを買いたがったのかということです。何がはやったかより、なぜはやったのかが重要なのです。

若者に売れる商品やサービスを開発するためには、何よりもまず「彼らは今どんな行為やシーンを望んでいるのか」を把握することが大事です。特に若者に売れ行きが低調なジャンルでは、これが好調の波に乗せるためのたった一つの方法と言ってもいいでしょう。

ヒット商品を生み出すには、常に背景やインサイト(購買意欲の核心となるもの)に戻って考える作業が不可欠です。その際は、今回紹介した友情確認や動画映え、韓国ブーム、憧れチャレンジ、下げチャレンジなどのキーワードがヒントになると思います。

そして、若者が求めているシーンに入り込んでいけるものを開発し、Z世代が「自分たちに向けた商品・サービスだ」と認識できるようPRしていくことが大事です。

構成=辻村洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。