関係性を改善するために今すぐできること
ヴァソプレッシン受容体の量は自分ではコントロールできませんが、パートナーとの関係性をよくするのに必要不可欠な、幸福ホルモンとも呼ばれる、オキシトシンは、自分たちで多少コントロールすることができます。
ハグや添い寝やマッサージなどのスキンシップでオキシトシンが分泌されることは有名ですが、単純に目を見て会話をするだけでもオキシトシンが分泌されるという報告もあります。また面白い実験で、オキシトシンを実験的に、鼻から噴霧したのちに、パートナーを見ると、脳の中で報酬系の回路(熱い恋愛中の時などに活性する場所)がとてもよく活性化することが示されています。これは、パートナー以外の人には効果がなく、パートナーを見たときだけに見られる現象でした。
また、通常熱愛中には、ドーパミンが出ているのですが、20年以上夫婦でいて相手への満足度やコミットが高い夫婦では、このドーパミン(通常数年で同じ刺激に対しては出なくなると言われている)とオキシトシン両方がよく分泌されているという報告もあります。
パートナーとの出会い、交際や結婚生活、浮気/不倫まで、自分の意思で行なっていると思っているものも実は、脳の勘違いやホルモンの作用によって左右されている可能性を多くの研究が示しています。その一方で、パートナーの目を見て話す時間を必ず設けるなど、意識的に行うことも、円滑な関係を長期的に続けていくには重要なのです。
<参考文献>
・Kajimura S, Ito A, Izuma K. Brain Knows Who Is on the Same Wavelength: Resting-State Connectivity Can Predict Compatibility of a Female-Male Relationship. Cereb Cortex. 2021 Jun 18:bhab143.
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内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。