ツイッターで飛び交った話題のワード
【山崎】Twitterでは、一時「ヌルヌル半裸イケメン」っていうワードがすごい勢いで飛び交っていました。開会式でトンガ選手団の旗手が、国の伝統的なスタイルだと思うんですが、上半身裸でオイルを塗った姿で登場して。インパクトが強かったし、しかもすごいイケメンだったので話題になったんだと思います。
【國武】バレーボールの高橋藍選手も、イケメンだってSNSで騒がれていました。海外のTikTokでは、かっこいい男子スケボー選手を集めた動画もバズっていましたよ。あとTwitterでは、スケボーの堀米選手と名前が似ている新潟のサッカー選手が注目の的になっていました。堀米選手と間違えてフォローしちゃった人が多かったみたいで、本人が「なんにもしてないのになんかフォロワー増えててワロタ」ってツイートしてて(笑)。それに反応して、わざと間違えてフォローするっていう遊び方をする人も多かったみたい。
【土井】女性では、カザフスタン選手団の旗手だったルイパコワ選手が大人気でした。最初はすごくきれいだってことで話題になったんですが、後から2児の母だってこともわかって、SNS上ではさらに盛り上がっていました。
「国やメダルの色は関係ない」という価値観
【矢追】イケメンとか美人っていう以外にも、芸能人の誰かと似ているっていう話題も多かったです。フランスのサッカー選手が芸人のアイクぬわらに似ているって話も、結構盛り上がっていました。アイク本人が「フランスの18番、俺じゃねーよ」ってツイートしていて、それもバズっていましたね。
【土井】芸人さんの場合は、本人がネタにすることも多かったですよね。霜降り明星のせいやも、開会式でスペインのプラカードを持っていた人に似ているってことで、自分のTwitterでネタにしていました。実際、すごく似ていて面白かったです。
【原田】皆さんはテレビで観戦するだけじゃなくて、SNS上でも色々な楽しみ方をしたようですね。前回のリオデジャネイロ五輪のときは、テキスト中心のツイッターが主流でインスタも静止画が中心でした。しかし今は、「動画」中心のインスタのストーリーズやtiktokが盛り上がっています。選手自身が選手村の様子や自分の素の姿を「リアルな動画」で積極的に発信してくれています。
これほど選手の生の姿に「動画」で触れられた五輪は、史上初かもしれません。リアルでの観戦ができないにも関わらず、若者はSNSのおかげで五輪や選手をこれまでのオリンピック以上に身近に感じることができていたようです。これは今大会の大きな特色だったのではないかと思いました。
これまでのオリンピックは、テレビ局が中継した競技や取り上げることが多かった選手が人気を博してきました。しかし、皆さんはそうした「テレビ局の意図」とは必ずしも一致しない、SNS上の「Z世代の感覚」に合う生の動画に触れ、良いと思ったものを見て、拡散しました。この「Z世代の感覚」に合うスポーツや選手は、必ずしも「国」や「メダルの色」は関係ない。きっと北京オリンピックもパリオリンピックも、今後のスポーツ業界は全体的に、「Z世代の心を掴む動画」をSNS上で流すことができる競技や選手が人気を博していくことになるでしょうね。
構成=辻村 洋子
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。