「100店舗を目指す」とはいわない理由

ドムドムハンバーガーには、事業継承後、100店舗に増やすことを目標に掲げていた時期がありました。でも私には100店舗という考え方はありません。店舗数はお客様にはあまり関係がないからです。お客様を第一に考える以上、意識すること自体が不思議なのです。それよりも「出店して欲しい」と声をかけてくださるところに出て行きたい。ありがたいことにそういうお声を多くいただくようになりました。

求められていることに応えられる企業になりたいという思いはあります。厚木店のオープン時に感じた、会社としてまだ筋肉質になれていない、足腰が弱い、という状態はだいぶ改善されてきたと感じています。

この3年ほどで会社の状況はかなり改善され、経営状態も良くなってきました。会社として、足元が強くなってきたのです。今の状況であれば、年に2~3店舗ずつはオープンしていけると感じています。

コロナ禍でも念願の黒字化を達成

20年はコロナ禍で、多くの店舗が時短営業や休業を余儀なくされました。

再販した「丸ごと!!カニバーガー」。
再販した「丸ごと!!カニバーガー」。(写真=『ドムドムの逆襲』より)

そんななか、ドムドムは21年3月期決算で売上前年比109%という結果が出ました。

売上高自体は98%台後半でしたが、そこにECサイトなどで好調な物販の売上をプラスしての数字です。20~21年にかけてオープンした新店の営業成績も好調で、今回の結果に寄与していると言えるでしょう。

路面店が少ないドムドムハンバーガーではデリバリーもほとんど行っていません。4月には2店舗が休業し、時短営業も多数ありました。そこも含めて非常に良い結果だと思っています。

コロナ禍では飲食業界が大きな影響を受けましたが、そんななか出店した「浅草花やしき店」「市原ぞうの国店」は好調ですし、再販した『丸ごと!!カニバーガー』は全店の売上を大きく底上げしてくれました。小さい会社ならではの臨機応変な機動力を活かして、その時々の状況を分析し、前に進めた結果なのだと思っています。

数字よりも大切なこと

しかしこの先のことは誰にも予測できません。事業において目標や予測を立てることは必須です。しかし、どんなに優秀なビジネスマンでも、最新のAIでも、このコロナ禍を予測できませんでした。

データを集めて精査し、マーケティングするというのが、今のビジネスの在り方。それが根本から揺らいでしまったのです。こんな時こそ、それぞれの企業が、溢れ出す不確定な情報に惑わされず、平時に持つ思い(経営理念・経営指針)に基づいた意思決定・課題解決をすべきではないでしょうか。

3年を費やし導き出した答えが、「お客様が愛し続け50年守ってくださったドムドムハンバーガーのブランドを育む。そのブランドは、スタッフ・消費者の人生に寄り添い、並走し、共感・共存することで構築する」です。その経営指針を基に「美味しいこと。楽しいこと。お客様を笑顔にすること」を実践していきたいと思います。

私は、「数字ではなく“人への思い”こそ、ビジネスにおいては大切」だと思っています。

藤﨑 忍(ふじさき・しのぶ)
ドムドムフードサービス社長

1966年生まれ。東京都出身。青山学院女子短期大学卒。政治家の妻になり、39歳まで専業主婦。しかし夫が病に倒れ、生活のために働き始める。最初はギャルブームの頃のSHIBUYA109のアパレル店長。店の売上を倍増させたが、経営方針の違いから経営者と対立し、退職。アルバイトでしのぐが、たまたま空き店舗を見つけ、居酒屋を開業。すると料理の美味しさや接客の良さで一躍人気店に。その腕を常連客に見込まれ、ドムドムのメニュー開発顧問に。「手作り厚焼きたまごバーガー」をヒットさせ、ドムドム入社。その後わずか9カ月で社長に。「丸ごと!!カニバーガー」などが話題になり、ドムドムの業績は確実に回復している。テレビ朝日系「激レアさんを連れてきた。」出演で話題に。