いつもニコニコ、元気そうなのに「あの人が?」
適応障害と聞くと、特定の状況や環境に“適応できない”心の弱い人がなるものと誤解されがちですが、実際は正反対です。ストレスの多い状況や環境であっても、あきらめずに適応しようと頑張る人が多い。「自分にとって苦手だからこそ、この人と仲よくしよう」「この場をよくしよう」と一生懸命に無理を続け、いよいよエネルギーが切れて症状が出てきてしまうのです。
職場ではいつもニコニコしていて、つらそうな様子、苦しそうな様子を見せないような人が、突然休むことになって、周りからは「えっ、なんで?」と思われることが多いのです。
実は、いわゆる「五月病」も、適応障害の一種です。新年度の4月に新しい環境になって、そこで適応しようと頑張り、エネルギー切れになるのが5月、6月ごろ。年末年始の休み明けにも多く、2月あたりに適応障害で悩まされる人が増えるという印象はありますね。
うつ病との決定的な違い
適応障害の症状はうつ病と似ていますが、決定的に違うのが「原因がはっきりしている」という点です。
うつ病の場合、振り返ってみて「あれがダメだったのか」と思い当たる節がある人もいますが、これといって明確な原因がわからない人のほうが多いですね。気づいたら朝から調子が悪く、頭の動きも知らない間にどんどん低下しているのがうつ病です。もちろん適応障害がひどくなると、うつ病にシフトすることもありますが、最初の時点で原因がはっきりしているか、していないかが大きな違いになります。
適応障害の原因として多いのは、たとえば上司や同僚などとの関係がうまくいかなくてつらいという、人間関係。そして、ほとんど会話がなく、パソコンの音がカタカタ鳴り響いているだけという無機質なオフィスに耐えられないなど、職場環境が原因となることもあります。
また最近は、テレワークが原因のケースも増えていますね。特に地方から出てきて、都会で一人暮らしを始めたばかりの20代の人たちは、実家に帰れない、地元の友だちもいない、ワンルームという閉塞感のある空間で、画面越しに会社の人とコミュニケーションしているだけでは、やはりしんどくなってきます。
A子さんの場合も、原因は人間関係。この上司がストレス源であることは明確です。A子さんのように30~40代の女性は、上司も部下もいて板挟みに遭うなど、人間関係をコントロールしづらい年代ですから、人間関係が原因で病気を引き起こすことが多いのは事実です。