ドラマ「ドラゴン桜2」が最終回を迎えた。同じく受験を取り上げた人気コミックに『二月の勝者』がある。マーケターの桶谷功さんは「『二月の勝者』には、大人が学べる仕事へのヒントが数多く隠されている」と指摘する――。
読書する女性
写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro
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読者対象が違う

こんにちは、桶谷功です。昨夜(6月27日)、同名の人気コミックを原作にしたドラマ「ドラゴン桜2」が最終回を迎えたタイミングで、この原稿を書いています。

ご存じのように「ドラゴン桜2」は阿部寛さん演じる弁護士・桜木建二が偏差値の低い私立高校の経営再建のため、生徒たちを東大合格に導くというストーリー。

一方で私がご紹介したいのが、中学受験をテーマにした『二月の勝者』(高瀬志帆作・小学館)というコミックです。どちらも「受験」を描いているのが共通点ですが、大きく違う点がいくつかあるので、比較しながら見ていきましょう。

まず、違うのが読者対象です。『ドラゴン桜』は受験生本人が対象ですが、『二月の勝者』の読者は受験生本人ではなく、その「親」。お父さんも読んでくださいね、というスタンスですが、おそらく実際に読んでいるのはお母さんのほうが多いでしょう。

実をいうと、私の娘も今年の春に中学受験をしました。そこでそのための準備を始めたころ、妻がこの漫画を買ってきた。それで私も引き込まれてしまったというわけです。

ゴールが複数ある世界

もう一つの違いは、ゴール設定の差です。『ドラゴン桜』が東大合格というゴールを設定し、アクロバティックな受験テクニックを紹介しつつ、そのゴールに向かって一直線に突き進んでいくのに対し、『二月の勝者』のゴールは一つではありません。

『二月の勝者』は「桜花おうかゼミナール」という架空の中学受験専門の塾が舞台。その吉祥寺校へ校長として赴任してきた黒木蔵人くろき くろうどというスーパー塾講師が主人公です。

黒木は塾で教える自分たちを「教育者」ではなく「サービス業」だと言い切り、売り上げを第一に追求する一見冷酷な人物ですが、講師としての腕は確か。その黒木の指導の下、中学受験に臨む子供たちとその親の姿が、新人講師・佐倉麻衣の目から描かれていきます。

桜花ゼミナールはどこがモデルとは言い切れない架空の塾ですが、難関校の合格者がいちばん多い業界トップクラスの大手塾ではなく、おそらく二番手くらいの中堅塾。この設定が絶妙で、この塾の最下位のクラスから最上位のトップクラスまで、さまざまな子供たちが登場してきます。