コロナでさらに強大化した“怪物企業”
この4社を合わせた年間売上高は約1兆ドルに達し、常連客の数は数十億人に及ぶ。彼らには地理的な境界も時間帯もカテゴリーの垣根も関係ない。ある1日の株価のわずかな変動だけでも、普通の大企業の時価総額と同じか、それ以上の額が動く。
コロナ禍は、多くの小売業者にとって致命的だったが、彼ら頂点捕食者にとっては、それまでも今後も代謝ステロイドの静脈注射を打ち続けるようなものになる。
この頂点捕食者たる怪物企業は、パンデミックでさらに大きく、さらに強く、そしてさらに大きな権力を持って浮上した。売り上げの最大80%を失って衰退する小売業者があるなか、一握りの巨大企業だけは思わず二度見してしまうほどの業績を上げていた。
唖然とするほどの成長率からもわかるように、パンデミックでこの4社はただただ大きくなるばかりだ。しかも飛躍的に。
コロナ禍すら成長の追い風にするアマゾン
アマゾンがエリート企業リスト、すなわち「1兆ドルクラブ」に名を連ねたのは、2020年2月4日のことだ。アマゾンはその日の終値ベースで時価総額を1兆ドル台に乗せ、アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの親会社)などと肩を並べることになり、現在、時価総額で世界最大の小売企業となっている。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界各地でロックダウンが実施された初期段階で、『ガーディアン』紙は、アマゾンでの製品・サービスの購入に、1秒間に1万1,000ドルが消費されていると報じた。つまり1日10億ドル弱である。実際、2020年第1四半期にアマゾンの売り上げは750億ドルとなった。
つまり、アマゾンの同四半期の売り上げ分だけで、米大手量販店チェーン「ターゲット」の2019年の年間売上高にわずかに満たない額なのだ。
これがどういう意味なのか、改めて考えてみよう。
アメリカ人の消費の半分はアマゾンを経由している
ほとんどの企業がコロナ禍で事業の中断を余儀なくされたが、このこと自体、2019年に業績好調ですでに大飛躍は時間の問題だったアマゾンというロケットの打ち上げ燃料になったのである。その年、『エコノミスト』誌は「同社から発送された商品は、35億個。地球上の人類の2人に1人がアマゾンで購入した計算になる」と指摘している。
また、昼間は1億人以上がズームで会議を行い、夜も同じくらいの人々がネットフリックスで映画やドラマを楽しんでいるが、これをクラウド技術で支えているのが、アマゾンのクラウドコンピューティング部門であるアマゾンウェブサービス(AWS)である。こうしたビジネスも含めると、アマゾンの売り上げは2,800億ドルに上る。