「感染拡大は若者のせい」に怒り
【原田】政治への不信感という点では、今年は衆院選というかなり大きな選挙がありますね。若者の政治離れが言われて久しいけれど、今回は五輪の強行開催やコロナ対策などで政治に不満を感じた人もいるかと思います。今回、若者の投票率は上がると思いますか?
【國武】若者の投票率はどうかな……あまり変わらない気がします。ただ、私自身は投票に行くつもりですし、LGBTQ問題や入管法改正などにどんな意見を持っているか、そこを見て選ぶと思います。
【矢追】僕は投票率は上がると思います。五輪が終わったら、きっとまた「若者が騒ぎまくってコロナが感染爆発した」「結局若者が悪い」みたいな話が出てくると思うんですよ。今までまったく政治に興味がなかった人も、そんな世間の声に対して反発というか、怒りを覚えて投票に行くんじゃないかと予想しています。
【鈴木かのん】私の周りでは最近、若者が悪いって言われたり緊急事態宣言をダラダラ続けたりされるたびに、会話の中で政治家への文句が出るようになりました。その中で「でもうちら、政治家さんたちを選ぶのに協力とかしてないしね」って話も出るようになって。文句を言うからには自分たちもちゃんと政治家を選んだほうがいいんじゃないか、そう意識する人は増えているような気がします。
何を言っても意見が通らない諦めの境地
【森】僕は変わらないと思います。そもそも政治の話って若者の間では一切出ない。政治と若者が乖離しちゃってるのかな。僕の周りは、コロナ対策に不満があっても、政治がどうってことよりコロナがクソだってことしか言わないです。政治に対しては圧倒的に知識も興味もないんですよ。だから、批判の矛先が政治家よりコロナになっちゃうんです。政治の知識がある人も少しはいるけど、「自民党の代わりはいない」って思い込んでいるところがあります。
【山田】私の周りだと、コロナへの不満と政府への不満は切り離されてるってほどではないですね。緊急事態宣言が延長されたり、若者の行動を規制するような判断が出たりするたびに、政府に怒りを覚える人が多かった気がします。でも逆に、もう諦めの域と言うか……。何を言っても宣言は延長されるし、何を言っても若者の意見は通らない。そう思っているから、今回も若者の投票率は上がらない気がします。
【鈴木俊太朗】コロナで色々な政治のボロが見えてきて、「何だこれ」って怒りを覚えている若者は結構多いと思うんですよ。でも「だからこうしたい」「こういう人に投票しよう」って、そこまでのモチベーションはまだ生まれていない気がします。だから、投票率もそこまで変わらないのかなと思っています。
【原田】コロナ禍や五輪を機に政治への関心が高まった若者もいるけれど、大多数はあまり身近に感じていないし、投票しても何も変わらないと思っているわけですね。でも、若者はコロナ禍でバイトを失ったり、感染拡大で悪者にされたりと、打撃を受けた当事者でもあるはず。皆さんの世代は数としては少ないけれど、それでも皆で行動すれば一定のインパクトは与えられると思います。少しずつ意識が高まっている、投票率は上がるだろうという意見もあったので、次回の選挙ではぜひ若者にも声をあげてほしいですね。
構成=辻村洋子
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。