給与が減れば社会保険も年金も減る

もう1つ、大きな落とし穴があります。

あまり知られていませんが、給与が減れば、社会保険の給付や年金も減る、ということです。影響が生じるのは、傷病手当金・出産手当金・育児休業給付金、介護休業給付金、将来受け取る年金、さらに失業給付です。

厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料は、「報酬月額」によって計算されます。ベースになるのは、事業主から受け取る報酬の月額を区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」の等級です。選択的週休3日制で給与が下がり、標準報酬月額の等級が下がれば、社会保険料も下がります。

保険料が下がるのはいいことのように見えますが、そうではありません。傷病手当金や出産手当金、年金の額は支払った保険料に応じて決められ、保険料を多く払った人ほど、受け取れる額は多くなる仕組みです。したがって、給与が減って社会保険料が減れば、受け取れる額も減る、というわけです。

ちなみに、保険料は労使折半で半分を事業主が負担しています。給与が下がれば、事業主があなたの社会保険や年金のために支払ってくれている社会保険料の額も減ります。

日本の年金帳
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出産手当金+育児休業給付金で68万円減額

実際、どの程度の影響があるのか。月収40万円、40歳、東京都在住の会社員の例で、給与が2割減った場合について試算しました。

給与2割減により、健康保険料は年間約6万円安くなります。一方で、病気やケガで4日以上続けて仕事を休んだ場合に給付される「傷病手当金」や、出産や育児で休業する際に受け取れる「出産手当金」「育児休業給付金」、介護のために仕事を休む場合の「介護休業給付金」も少なくなります。

「傷病手当金」は1日あたり約2000円、540日(最長の給付日数)で約108万円ダウンです。保険料は年間約6万円しか減らないのに、給付は最大で約100万円以上も減ってしまうのです。

「出産手当金」は、98日で約19.6万円ダウンです。育児休業給付金は、子供が1歳で職場復帰予定だと約48.6万円減ります。出産手当金と育児休業給付金を合わせると約68万円も少なくなってしまいます。出産を考えている場合、とくに妊娠中は仕事の負担を抑えたいと思うかも知れませんが、お金の面で考えれば、給付金を受け取るまではフルタイムで働いた方が有利と言えます。

会社を辞めて再就職を目指す場合に受け取れる失業給付では、保険料が年額約3000円安くなります。月収40万円では基本手当の日額は6666円ですが、給与2割減では6082円となり、1日あたり584円の減額です。