「過酷ファッションショー」がメディアに注目された理由

2019年から開催している「過酷ファッションショー」のリリースでも、メディアの目を引く工夫をしています。

栗田朋一『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)
栗田朋一『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)

過酷ファッションショーは、強風に吹かれたり、雨に晒されたり、雪が降ったり、という環境を屋内につくり、ワークマン製品を着たモデルがその機能性をアピールするショーです。

20年10月に実施した第2回では、ボルダリングやスポーツ・エンタテインメントの「SASUKE」(TBS系)のような障害物を設けたり、ランウェイの一部を凍結させたりするなど、さらに過酷なものになりました。

ネーミングや内容だけでもキャッチーだと思いますが、さらに私たちは、番組で取り上げられる可能性が高まるであろう仕掛けを考えたのです。

ショーでは水を使っているため、普通の考え方なら、会社としては水がかからない対策をするところですが、あえてイルカショーのように「水がかかるかもしれない」演出をしたのです。リリースでも「観客席の前列では多少水や雪がかかる場合もありますので、ご容赦願います」と強調しておきました。

すると、それが受けて、メディア側から「水をかぶる席はどこですか?」と問い合わせをいただいたのです。また、テレビ局の方は水がかぶっても問題ないようにカメラに防水対策をして来てくださいました。遊び心を持って企画をつくると、リリースの反応は全然違うと感じた経験でした。

新製品のリリースにも工夫を

ここ数年、リリースに工夫をしている弊社ですが、実は新製品のリリースは出したことがありません。なぜなら、自発的に製品の紹介をしてくれる方々がいるからです。弊社では、「アンバサダー・マーケティング」という手法をとり、その方々に情報発信をお任せしています。それだけで十分だと考えているのです。

「しなくても良いことは何か」を考えることも、広報を担当する上で重要な要素かもしれません。

株式会社ワークマン

【会社概要・業務内容】
1982年に設立。作業服・作業用品、アウトドア・スポーツ・レインウェアを販売する専門店フランチャイズ店舗の運営。2018年より、WORKMANに加え、カジュアルな作業服を扱う「WORKMAN Plus」、2020年10には女性をターゲットとした「#ワークマン女子」をオープン。2021年1月現在、3業態合わせて、全国で902店舗を展開している

【広報体制】
3名。2020年4月に立ち上げ。

営業企画部兼広報部 部長 林 知幸さん
新卒で株式会社ワークマンに入社後、フランチャイズ店舗をサポートするスーパーバイズ部、開発部を経て、営業企画部と広報部を兼務。広報歴は2年。

栗田 朋一(くりた・ともかず)
PRacademy代表取締役

1971年、埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。明治学院大学社会学部卒。歴史テーマパーク「日光江戸村」を運営する大新東で広報を担当し、江戸村及びグループ会社全体のコーポレートPRを手がける。2003年に電通パブリックリレーションズに入社。その後、07年にぐるなびに転職し、広報グループ長を務める。現在は、自身で立ち上げたPRacademyの代表取締役を務める。著書に、『現場の担当者2500人からナマで聞いた 広報のお悩み相談室』(朝日新聞出版)がある。