待機、印刷、納品で午前4時、1時間半後にまた出勤

小室さんも、省庁にコンサルティングを行ったことで、議員の遅い時間の理不尽な要求が長時間労働を強いるという現実を目の当たりにしたという。

「国家公務員総合職(旧・国家公務員一種)試験に受かった東大法学部出身の優秀な人たちが、夜中の3時ごろに大量の資料を一生懸命印刷し、大臣が読みやすいようにマーカーを引いて、耳付け(付箋張り)し、納品するのが午前4時。そして、シャワーを浴びるために一度家に帰り、午前5時半からの大臣レクに備える。そんな様子を拝見できた」

小室さんは、そんな官僚の働き方の実態を、国民はもっと知るべきだという。

「コロナ禍で私たちは、『どうして政府は適切にお金を使ってくれないんだ』という憤りを強く感じたと思います。一方で、たった4~5人の議員の質問通告が遅いがために、全省庁の待機がかかって102億円という残業代がかかっている。この状況を国民は知るべきです。さらに、官僚全員が、残った仕事はテレワークにして22時までに一度家に帰ることにしたら、タクシー代の22億円は明日にでも浮く」

「2日前ルール」が守られない

調査によると、「2日前ルール」を守っていない議員が多かった政党は、立憲民主党(回答数70)と共産党(同61)だった。両党によると、国会の委員会などの開催日程がギリギリまで決まらず、前日になってしまうことがあるためだという。

質問通告2日前のルール

しかし今回、ルールを守っている議員として名前が挙がったうちの1人であり、元財務官僚でもある国民民主党の玉木雄一郎代表はこう指摘する。

「いつも問題意識を持っていれば、質問はすぐに書けるはず。それに、2日前に質問を出せば、質問する日まで余裕があるので頭の整理ができ、よりよい形で質疑に臨める。官僚からも、『早めに質問を出してもらえると、よく考えて答弁を作れるので、よいやり取りになる』と言われた」。もし、突然スキャンダルが出てきても、そういった質問は追加で質問通告すればよいので、そのためだけに全てを遅らせる必要はないと言う。

また、経済産業省の元キャリア官僚で民間シンクタンク「青山社中」筆頭代表の朝比奈一郎さんも、早く質問がわかれば、もっと国会で意味のある議論ができるようになるだろうという。

「青山社中」筆頭代表の朝比奈一郎さん 写真=大門小百合

「官僚をやっていた実感で言うと、野党の質問にも鋭い、よい質問があるんです。でも、前日に言われたら、これはもう守るしかないですよ。『今自分がやっている政策は正しいです』と大臣に話してもらうしかない。もっと時間があればしっかり検討して、大臣に『おっしゃる通りです、そういう方向で検討します』と言ってもらうこともできる」

しかし今の国会の体制では、与党が出した法案について議論しても、修正する場が事実上なく、建設的な議論ができないと小室さんは指摘する。与党は、法案を修正させずに会期内に成立させることばかりに注力。野党は、反対する法案の審議日程をできるだけ遅らせ、廃案に持ち込むしかないというのが現状だ。こうした、ギリギリの日程調整の中で官僚の残業が膨らんでいるのだ。

では、何から始めればよいのだろうか。