管理職に打診されたら「断る理由はない」
【佐藤】僕は、先々のキャリアプランは正直まだよくわからないです。最初に入った企業で昇進を目指すもよし、起業や副業もよしって感じで。ただ、いちばん重視しているのは自分のやりたい仕事をすることなので、それができなければ他の道に流れていくんだろうなとは思っています。
【山岸】私は一生同じ会社にいようとは考えていません。ネット広告の代理店に就職する予定ですが、この業界は変化が早いので先がどうなるかは誰にもわからないと思うんです。自分自身が結婚や出産の後に復帰するかどうかもわからない。もしかしたら会社員は辞めて、今やっている副業を本格的に進めていくかもしれません。
【佐藤】職場環境がよければ、ずっと同じ社にいて昇進を目指すのもアリですが、働いていたら絶対悪い部分も見えてきますよね。そう考えると、自分は転職する確率のほうが高いかな。最終的には「ここで昇進するんだ」「お給料のよさを優先するんだ」って決心できる時が来たら、その時いる企業が骨を埋める場所になるのかなと思います。
「管理職を断る理由はない」女子大生の本音
【原田】昇進と言えば、この前テレビで「女性が管理職になりたがらないのは問題だ」というテーマを取り上げていたんですが、山岸さんや佐藤さんは管理職になりたいと思っていますか?
【佐藤】なりたいし、ぜひやってみたいです。人をまとめることが好きなので、やりたくない理由はないですね。なりたくない人は、管理職になると育児とのバランスが崩れそうだからかな。それだったらわかるし、実際、周りには「仕事がうまくいかなかったら結婚すればいいや」みたいな姿勢で就活している女子もいます。でも、その人はそういう志向だっていうだけで、私自身はネガティブに捉えてはいません。
【山岸】私は新しいモノやコトが好きであちこち気移りするタイプなので、そもそも同じ職場に長くはいられないと思うんです。だから、管理職になる未来は見えないかな。でも、もし機会があれば断る理由はありません。同世代の友達の中には、結婚後も働き続ける未来が見えないって言う子もいますが、だからってそうした考え方はいけないとか、ネガティブに捉える必要は全然ないと思います。
【原田】今回はたくさんの意見が出ましたね。攻めと守りの就活、上司との飲みニケーションに関する意識、キャリア観など面白いポイントがたくさんありました。これは一つ前の世代とはまた違う、Z世代ならではの感覚と言えるかもしれません。彼らが社会の中心になる頃には、働き方も職場の人間関係も大きく変わっていくのではないかと思いました。こうした若者たちの意識変化に、今後も引き続き密着していきたいと思います。
構成=辻村洋子
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。