これから生き残る仕事を考える際に、日本の「人気企業ランキング」は参考にならない。世界各国で働いてきた著述家の谷本真由美氏は「アメリカの『最悪の仕事』ランキングでは、1位はタクシー運転手、2位は木こり、3位は新聞記者だった。新聞記者は日本でエリートといわれるが将来は危ない」という——。

※本稿は、谷本真由美『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

日本ではエリートの新聞記者はアメリカでは「最悪の仕事」

図表1はアメリカの求人サイトであるCareerCastがアメリカ政府の雇用データをもとにまとめた「最悪の仕事」のランキングです。

このランキングは、「酷い報酬」「ストレス」「ジョブセキュリティ」などをもとにまとめられていますが、日本の「人気企業ランキング」とは随分内容が違います。

まず、日本ではエリートの仕事であり、憧れの仕事の一つである新聞記者は、低い報酬、仕事の不安定性、ストレス、成長性などの観点から見て、現在アメリカで最悪とされる仕事の一つです。『The Jobs Rated Almanac: The Best Jobs and How to Get Them』(iFocus Books)で取り上げられている200の仕事の中でも最下位です。

この傾向は、アメリカだけではなく、カナダ、イギリス、オーストラリアなどの英語圏でもまったく同じです。英文メディアの世界では、新聞社の倒産、合併、縮小に伴って、記者のレイオフが増えています。英語圏は大胆なので、一気に記者を数百名単位でクビにしたり、写真報道部署の仕事をすべて海外に外注したりしてしまいます。

例えば、アメリカの主要大衆紙である「USA Today」の親会社であるGannettは、2013年には同社が所有する新聞社の中から合計で200名あまりを解雇し、翌年は「USA Today」のベテラン記者や編集者約70名を解雇しています。

2013年にはイギリスの経済高級紙であるFT「Financial Times」が35名の編集スタッフを解雇し、デジタル編集者に置き換えることを発表しています。

イギリスの保守系新聞である「Daily Telegraph」も、2014年にデジタル部門の編集者約50名を解雇しています。

さらに、新聞記者と同じく、なんと日本では皆のあこがれであるニュースキャスターやDJも危険職種とされていますが、これも新聞記者と同じく、インターネットの発達によりメディアの消費方法が変化していることが原因です。