この2、3年でより精力的に

——なんでもやってみようという積極的な姿勢は、デビュー時から貫かれているのでしょうか。

【桜木】いえ、この2、3年でそうなりましたね。というのは、正直に打ち明けると、ようやく更年期のきつい時期を抜けて楽になったから。課題を見つけ、自分の中でその答えを見つけるために書いています。『家族じまい』は自分自身をネタにしてどれぐらい話を広げられるかというチャレンジでしたし、一章が原稿用紙80枚分でそれを5本分そろえるというのは、これまでからすると難しいことでしたが、やればできると思いました。その後に『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』(KADOKAWA)という本で疑似家族を描いたので、この2作を並べてみると、今の私の家族観が見えてきます。

——そういったキャリアの大成期に、ずっと描いてきた家族をテーマにした絵本を出したということになりますね。

【桜木】『家族じまい』を書いて客観的にものを見られるようになったかも。母の介護についても、父が精一杯やっているのがわかるんです。さらに、この絵本を書いたことで、語り手となる少女と同じ年頃に戻れたような気がし、自分の少女時代をよい形で振り返ることもできました。この年齢になってみて初めて理解できる過去の自分もいるんですね。

他人に文句を言わないで生きていきたい

——書くことで過去の傷を癒せるということでしょうか。

【桜木】心の落としどころも、落ち着く場所も人それぞれ。私は母が自分を忘れたときに、母の子ではなく、違う存在になれた。母の中で私はいなくなったような状態で、それを絵本では母親に「あなた、親切な人ね」と言われるという極端な場面として書きましたけど、そんな感覚なんです。私も40代の頃は、親にされた「嫌なことを毎日思い出していると、それに慣れて気にならなくなる」と書いたこともあるけれど、今はもう人生の残り時間を意識しているので、できるだけよい仕事をして、おいしいものをたくさん食べて、他人に文句を言わないでやっていきたいなと思っています。

——お子さんに対しても口出しはせずという感じですか?

【桜木】思うに、親が子に生き方を教えようと思ってしまうと、たいへんなんじゃないですかね。私は56歳の今、子どもたちがひとり立ちし、「あとは死んで見せるだけ」だと思っています。親ってかっこよく死んでなんぼかなと思うんです。